先日の4月17日・18日、billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026 “Fanfare”@NHKホール公演に参加しました。
指揮:大友直人
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
※本投稿では、公演のセットリストや演出を記載します。本ツアーは15都市25公演の規模で行われます。初日を迎えていない方や、ネタバレに抵抗のある方はご注意ください。
1. 公演前の様子
公演前の会場の様子です。
会場外







会場内










前回開催された4月8日の広島公演から1週間強。中8日という本ツアーで最も長いインターバルを経て、舞台は東京・NHKホールへと移りました。全25公演のうち、この2日間は14・15公演目にあたります。本ツアーもいよいよ折り返し、後半戦に突入しました。
2. 第一部の様子・各曲の感想

1日目は2階席の後方上手端、2日目は同中央上手端の座席でした。客席から見て最も右端の座席ということもあり、ステージ上の機材配置の関係で、コントラバスの隊列やティンパニの細かな様子を確認しづらい場面はありましたが、それ以外の視界は良好でした。
定刻(1日目は18時00分、2日目は16時00分)、左右の舞台袖から東京フィルハーモニー交響楽団のメンバーが続々と入場します。続いてコンサートマスターが一人下手から登場し、入念な調律が始まりました。オーボエの音を皮切りに、木管、弦楽器、そして金管へと音が移り変わっていきます。特に終盤、ブラスの音が強く高鳴る場面では、これから始まる「ファンファーレ」の祝祭的な雰囲気が早くも会場に醸し出されていました。
チューニングの最終盤に場内が暗転。一時の静寂の中、大友さんが下手から姿を現します。スポットライトがその足取りを追う光景は、マエストロとしての威厳をより一層際立たせていました。大友さんはステージ中央でコンマス、そしてトップサイドの奏者と丁寧に握手を交わすと、客席に向けて一礼し、静かに指揮台へと登りました。
1. ファンファーレ(管弦楽)
大友さんの微細な指揮に導かれ、ティンパニがざわつくような単調なリズムを刻み始めます。何かが始まる予感を孕んだ空気の中、ホルンが導入部の音色を奏でると、それに寄り添うようにストリングス隊が続いていきました。
特筆すべきは、その後に奏でられたフルートによる前奏の主旋律です。この2日間、フルートの音色は上下に細かく震えるような、極めて特徴的な響きを持っていました。その哀愁を帯びた小節の効いた奏法は、まるで民謡の尺八を彷彿とさせ、一気に日本の大自然を想起するような和のテイストを感じさせる独創的な世界観へと観客を引き込みました。
続いて、ストリングスの高弦が主旋律を引き継ぎ、サビのメロディーを豊かに広げていきます。ここでは、コントラバスの低音が堂々と行進するようなリズムを刻み、楽曲に立派な躍動感が生まれました。最後は金管楽器も加わり、オーケストラ全体が一体となったゴージャスなフィナーレへ。非常に豪華な音の厚みの中で、長く保たれた持続音が深い余韻を残しながら次曲へと移っていきました。
2. 歓喜の歌(管弦楽)
前曲「ファンファーレ」の持続音がホールに長く漂う中、その余韻を縫うようにホルンの音が重なり、鮮やかに曲が切り替わります。間を置かずに次曲へと流れ込むその構成は、まるで壮大な管弦楽のメドレーを聴いているかのようでした。
この曲の見どころは、オーケストラ全体による豪勢なアンサンブルと、各パートが織りなす緻密なソロの対比にあります。特に終盤、フルートとチェロが共演するパートでは、前曲から一貫して際立っていたフルーティストの震えるような波長がチェロの深い響きと溶け合い、非常に流暢で美しい一幕を作り出していました。
フィナーレに向けて演奏は加速し、全奏による圧巻のクライマックスへ。大友さんが両手を大きく掲げると、それに呼応するように各楽器が力強く共鳴します。2日間ともに印象的だったのは、その締めくくりのポーズでした。これまでのような胸の前で両手をクロスさせる形ではなく、右手を大きく、力強く振り回すダイナミックなタクトで躍動感あふれるフィニッシュを飾りました。
序曲が終わると、大友さんが下手に向けて合図を送ります。そのタクトに導かれるように、いよいよ玉置さんがステージに姿を現しました。
本ツアーの特徴でもある第一部の衣装は、胸元に白とグレーのスカーフが重層的に織りなされた、非常に洗練された装い。スポットライトを浴びて光るその多層的なデザインが、ステージに華やかさを添えていました。玉置さんはステージ中央へ進むと、大友さんとガッチリと両手で握手を交わします。1日目には、前のめりになって力強く手を握る姿が見られ、その佇まいからは並々ならぬ気迫が早くも溢れ出していました。
客席に向き返ると、会場は割れんばかりの拍手に包み込まれます。両日ともに、その拍手の渦はより一層大きく高まりました。玉置さんが静かにマイクを手に取ると、ステージはさらに深く暗転。静寂が支配する中、いよいよコンサートの本編が幕を開けました。
3. GOLD
大友さんが下手側のバイオリンセクションへ向けて指揮を振ると、華やかなストリングスの調べがホールの広大な空間に広がります。続いて大友さんは玉置さんの方へと向き、互いに呼吸を測りながら第一声、
行こう…遠くまで
のタイミングを合わせました。その一言が放たれた瞬間、会場の空気は一変。語りかけるような歌い口で聴き手を一気に自身の世界へと引き込む、玉置さんの高い表現力に圧倒されました。
この曲の真骨頂は、音を鳴らしている時間だけでなく、その合間に生まれる贅沢な余白にありました。2日間ともに、玉置さんと大友さんのコンビネーションは実に見事でした。特にラストサビ前の、
だから…行こう
星屑と地の果てへ
では、玉置さんが歌い出しを大きく遅らせ、間延びさせながら歌い始める場面があり、至福の時が流れました。2日目には、この直前のフレーズ、
独りぼっちで寂しかった
その手に舞い降りるさ
で声量がふっと弱まり、まるで感極まったかのような繊細な響きを帯びる一幕も。何もない静寂さえもが伴奏の一部であるかのような、緊張感と慈愛に満ちた駆け引きが繰り広げられました。
曲の締めくくりでは、二人が正面から向き合い、
①笑い…②ながら…
のリズムに合わせて二度深く頷き合う姿がありました。そこから音が完全に止まり、玉置さんの
行こう…
というアカペラだけが会場に溶けていく完璧な静寂。その余韻を十分に味わい尽くしてから、大友さんのタクトで壮大な後奏がスタートしました。
演奏終了時には、大友さんは右手をゆっくりと胸の前でそっと握りしめるポーズを決め、同時に玉置さんも胸に手を当てるジェスチャーで応えます。二人の深い信頼関係が、最高の形で結実した一曲となりました。
4. キラキラ ニコニコ
大友さんの指揮により、オーケストラが徐々に熱を帯びていくクレッシェンドな演奏で幕を開けます。壮大な世界観が生まれたのち、木管楽器が晴れやかなメインメロディーを奏で始めると、ステージは鮮やかな新緑の光に照らされました。
歌唱パートに入ると、玉置さんの低音が心地よい重厚感をもって響き渡ります。2日目は、深みのある歌声の中にもどこか瑞々しさが際立ち、静かな伴奏下で純粋な声質がくっきりと浮かび上がるような、贅沢な味わいがありました。
この曲のハイライトは、玉置さんの卓越したマイクワークが生み出す音のダイナミズムでした。曲中盤の間奏でマイクを大きく遠ざけ、生の歌声で
Yeah〜!Oh〜!
とフェイクを響かせた直後、オンマイクで放たれる
おはよう〜〜〜
どんな天気でも
のロングトーン。マイクオフとの圧倒的な声量差が、音の奥行きを見事な立体感として表していました。
(全力)全力で笑って
のパートでも、オフマイクから瞬時にオンマイクへ切り替えることで、聴き手の胸に迫るギャップを創出。続く、
もし疲れたら
僕がおぶってあげるよ〜〜〜
では、2日間ともに圧巻の長さと伸びやかさを誇るロングトーンを披露し、ホールの隅々までその歌声を響かせました。
曲のラストは一転して静かな締めくくりに。玉置さんと大友さんが正面から向き合い、
キラ・キラ・ニコ・ニコ
のリズムを丁寧に合わせる両者の姿がありました。ここでハープの弾けた音が止まり、静寂が訪れた瞬間に解き放たれるアカペラの
だね…
という一言は、あまりにも深い余韻を伴って客席に届きました。
そこから大友さんの指揮で後奏が始まると、玉置さんは演奏の厚みに負けない力強いシャウトを重ね、感動的なクライマックスを演出。最後は大友さんが両手を徐々に内側へ絞り込んでいく繊細な指揮で音を閉じ、大胆さと繊細さが織りなされた芸術点の高い一曲が幕を閉じました。
5. いつもどこかで
序盤の玉置さんの歌唱は、聴いているこちらの胸が締め付けられるほど感傷的な響きを帯びていました。特に、
泣いている人のそばで
やさしく咲く小さな花になって
というフレーズで、声を詰まらせるように歌い上げたシーンが強く印象に残りました。最近、玉置さんはこの歌詞に想いを馳せる背景があるのか、本パートで感極まるような姿が散見されますが、この2日間も一言一言に深い慈愛が込められているのが伝わってきました。
曲の中盤、玉置さんが
暗闇に迷う時は 僕の愛を感じるように
を歌い終えると、大友さんのタクトはステージ奥のブラスセクションへと向けられます。間奏で奏でられた東京フィルの金管楽器によるアンサンブルは、それまでの静寂を塗り替えるほどにゴージャスで、ホール全体を輝かしい音色で満たしていきました。
そこから曲が後半に入ると、玉置さんのパワフルな歌声が随所に見られました。2日目は、
止むことなく 繰り返さ〜〜れる
のパートで、「さ」の語気を強調するような力強い発声がホールに響き、その群を抜いた声量に圧倒されました。また、
吹きすさぶ 風の中も〜〜〜
や
忘れないで どんな時も〜〜〜
といった箇所で、本来音程を下げるところをあえて上げていくアレンジも、2日間共通して見られました。
そして迎えたクライマックス。
僕が君を〜〜〜〜〜
という圧巻のロングトーンでは、玉置さんと大友さんが真っ向から対峙し、見事な音の押し引きを繰り広げます。このトーンが玉置さんのフェイク歌唱によって収まると、その後は二人が息を合わせ、
包んでいる…
という囁くような歌声へ。最後は、伴奏のないアカペラで
よ…
という余韻だけが静かにホールに溶けていきました。
本編開始からの3曲を振り返ると、歌声と演奏が互いを一切阻害することなく、むしろ高め合いながら共存するパフォーマンスが展開されました。玉置さんと大友さんの揺るぎない信頼関係が、阿吽の呼吸によってパーフェクトなシナジーを生んでいました。
6曲目
暗転したステージに大友さんの姿だけが浮かび上がり、上手側前方のヴィオラ首席奏者へ静かに目配せを送ります。すると、ステージは一気に深いオレンジ色の光に包まれ、ヴィオラの演奏が先行して木管楽器とハープが重なる前奏が始まりました。これまで、第二部の幕開けを飾っていた【純情】が、第一部の中盤へ。意表を突くセットリストの変更に、会場には新鮮な緊張感が走りました。
歌唱パートが始まると、玉置さんの低音の歌声が深みを持って響き渡ります。その重厚な音色は、聴き手の胸を静かに震わせました。とはいえ、第二部の全身が黒い衣装で歌っていた頃と比較すると、白とグレーの装いも相まってか、どこか優しく、ややカジュアルな温かみも感じさせました。
サビに入ると、特に2日目は、
お〜〜まえが宝物
のフレーズを、1番・2番ともに一際力強く玉置さんが歌い、感動的な熱量がホールに広がりました。その一方で、続く
その言葉だけ 投げ出さずいた〜
の締めくくりでは、1番は脱力したような繊細なトーンで歌い上げ、2番では
その言葉だけ 投げ出さずいた〜ぁあ〜⤴︎
と音程を一段階押し上げていくパワフルな歌唱を見せ、曲の中で見事な変化をつけました。
その後、オーボエとハープの伴奏のみで紡がれた、
思ったように 好きに生きなよ あせらず
のパートでは、曲調が一気に静まり返り、究極の引き算による伴奏が玉置さんの言葉をより一層際立たせました。
最後は少しずつ演奏に熱が帯びて迎えたクライマックス、
オレのお守り くしゃくしゃの純情〜〜〜
というロングトーンの最中、ここまで何一つとして変化の無かった照明が、深いオレンジから鮮烈な青へと一変します。その光の中で解き放たれた玉置さんの
かあちゃん
という渾身の叫びは、天に向かって真っ直ぐに想いをぶつけるような、圧倒的なスケール感がありました。
後奏でも情熱的なシャウトを重ね、感動の渦を広げた玉置さん。曲が終わると、玉置さんと大友さんが互いに胸に手を当てるポーズで通じ合い、美しい一幕で締めくくられました。
7. MR.LONELY〜サーチライト(メドレー)
大友さんの上下に弾む指揮に合わせ、軽快なフルートの演奏で「MR.LONELY」が始まります。「純情」がひとつ前に組み込まれたことにより、これまでの公演からは一曲遅れてのスタートとなりました。玉置さんは前奏から裏声を繊細に伴奏へ重ね、柔らかな立ち上がりを見せました。
歌唱パートに入ると、この2日間は特にオーボエの音色が魅力的に主張していたのが印象的でした。その木管楽器の豊かな旋律は楽曲に深い彩りを添え、玉置さんの歌声に寄り添うようにして心地よく響き渡りました。
この日は「純情」の曲順が変更されていたこともあり、続くメドレーの構成にも何らかの変化があるのではないかと思い、サビの入りに注目していました。すると、これまでの
何にもないけど いつでも
といった1番の歌詞ではなく、
何にもないけど 僕らは
と、いきなりラストサビのフレーズが展開されました。この瞬間、メドレーの構成にも変化が現れたことが分かりました。従来、同曲は
1番→2番〜ラストサビ
といった流れを取っていましたが、この2日間は
1番〜ラストサビ
へと直結して、2年前までのようにやや楽曲が短縮された形になりました。
玉置さんの歌声は、曲が進むにつれてみるみる力強さを増していきます。特にクライマックスの
元気で〜〜〜いるから
では、ホールの広大な空間を震わせるほどの強烈なトーンを響かせ、圧巻の歌声で本編を締めくくりました。後奏では、前奏と同様に裏声を伴奏に合わせて繊細な余韻を生み出し、メドレーの1曲目を終えました。
木管楽器が奏でる温かな旋律に導かれ、メドレーは「サーチライト」へと移ります。2年前までのメドレーでは、2曲目に「All I Do」も選ばれたこともありましたが、今回はこれまで通り「サーチライト」が選曲されました。メドレーの中で楽曲同士が完全に分断される「All I Do」に対し、前曲の余韻をそのまま引き継いで流暢に展開する構成は、オーケストラの響きをより活かしたスムーズな繋がりに感じられました。
序盤はステージの照明が絞られ、非常に落ち着いた雰囲気の中で進行します。玉置さんの歌声は深く、低い音域が強調されており、その歌唱を際立たせるように寄り添う低弦の演奏が印象的でした。しかし、サビに差し掛かると、大友さんが大きく振りかぶるダイナミックな指揮に合わせ、楽曲は一気に光が差し込んだような明るさを帯びていきます。
本曲も「MR.LONELY」と同様に構成が変化されており、これまでのフルサイズではなく、
1番〜ラストサビ
へと繋がる短縮バージョンで展開されました。クライマックスの
サーチライトはそうなんだ
君なんだ 君なんだ
というフレーズでは、玉置さんが上手端から下手端へと、客席全体を包み込むように大きく手を差し伸べ、非常に気持ちのこもったパフォーマンスを披露しました。
2日目の後奏では、伴奏の細かな動きに合わせて極めて緻密な裏声のフェイクを重ねていき、最後には会場を震わせる爆発的なシャウトを放ってフィナーレを飾りました。音が止まった瞬間、玉置さんと大友さんが静かにアイコンタクトを交わします。一瞬の余白を保ったのち、深い感動に包まれた客席からは、一斉に拍手が湧き起こりました。
セットリストの変更に伴ってメドレーの構成にも変化が現れ、「MR.LONELY」と「サーチライト」がともに2年前までと同様の短縮版になりました。曲が切り詰められたために、これまで印象に残っていた劇的な展開がいくつか影を潜めてしまったように感じる場面もありました。
まず「MR.LONELY」では、1番終了後の間奏で見られた、玉置さんが全力で叫ぶ発声パートの地声歌唱がカットされました。また、本来なら2番のサビ前にあった、ストリングス隊の上昇気流の演奏に乗せて溌剌としたシャウトを放ち、一気にサビへと突き進む展開が消えてしまいました。落ち着いた伴奏で静かにサビへ入る1番と、エネルギーを爆発させてサビへ向かう2番。1曲の中で生み出されていたあの鮮やかなコントラストが見られなくなったことは、少し残念に感じた点でした。
「サーチライト」においても、全編フルでじっくりと曲が進むにつれ、ラストサビに向けて玉置さんの歌声がみるみる感傷を帯び、最後には感極まっていくという、あのグラデーションが特徴的でした。今回の短縮によって、そうした感情の積み重ねがもたらす劇的な変化が生まれにくくなった点は、やや寂しさを感じる部分でもありました。
8. Friend
壮大なオーケストラ演奏で幕を開けると、その後は演奏が静まるのと同時にステージが深い闇に包まれます。ステージが濃紺に染まる中で玉置さんを白く、大友さんを黄色く照らすスポットライトのみが浮かび上がり、二人の存在感が神聖なまでに強調されていました。
完全な静寂が訪れたのち、ピアノが刻む三音を合図に歌唱パートがスタートします。特に2日目は、玉置さんの歌声は非常に瑞々しく、言葉を一つひとつ丁寧に置きに行くような純粋さが印象的でした。重厚感がありながらも透き通ったその声質は、本編序盤の「キラキラ ニコニコ」で見せた表情を彷彿とさせ、ピアノの繊細な伴奏と溶け合うようにして聴き手の心に染み渡りました。
サビでは、玉置さんの真骨頂ともいえる強烈なロングトーンが炸裂します。特筆すべきは、その響きの巧みな使い分けでした。各パートの1回目はビブラートをかけず、どこまでも真っ直ぐに突き抜ける歌声。そして2回目には、波のような音圧となって迫りくる力強いビブラートを響かせます。さらに、サビの抑えめのパートでは声を震わせ、時には詰まらせるような感傷的な表現を織り交ぜることで、楽曲の持つ哀愁をより一層深めていました。
ラストサビを力強く歌い切った玉置さんは、マイクを少しずつ遠ざけながら、ガッツポーズを決めるような仕草を見せました。その後、オーケストラによる壮大な後奏が続く中、下手の袖へとゆっくりと退場していきました。主役が去った後もステージでは東京フィルのアンサンブルが熱を帯び、最後は大友さんが左手をそっと握り込む優雅な指揮で、驚きのあった第一部が締めくくられました。
3. 第二部の様子・各曲の感想
約20分の休憩を経て、第二部が始まります。オーケストラのメンバーが入場して調律を終えると、続いて大友さんが登場。ここでもスポットライトを一身に浴びながら歩を進め、大きな存在感を示しました。大友さんがゆっくりと指揮台に登ると、管弦楽による第二部のプロローグが始まります。
9. 歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」(P.I.チャイコフスキー)
大友さんの力強く上下に弾むような指揮に導かれ、トランペットによる鮮烈なファンファーレが鳴り響きます。続いて旋律を引き継いだストリングス隊が、駆け足をするような切れ味鋭いリズムを刻み始めると、会場は一気に舞踏会の高揚感に包まれました。その演奏は非常にダイナミックで、音圧が真っ向から迫ってくるような迫力に満ちていました。
曲の中盤、一度静寂が訪れると楽曲は表情をガラリと変えます。木管楽器による柔和なアンサンブルが温かな空気感を生み出し、その後チェロが重厚な主旋律を重ねていくパートは、冒頭の豪勢な響きに対する見事なアクセントとなっていました。この「動」から「静」への転換点が、楽曲に深い奥行きを与えていました。
終盤、再びストリングス隊による激しい演奏へと回帰すると、オーケストラ全体のアンサンブルはさらに熱を帯びていきます。一糸乱れぬ息ぴったりのパフォーマンスは、聴き手の感情を揺さぶるような見事なハーモニーを作り出していました。最後は最高潮の盛り上がりの中、大友さんが両手を高く掲げてから大きく振り回す、ダイナミックな指揮でフィニッシュ。管弦楽単体としても極めて満足度の高い、圧巻のオープニングとなりました。
管弦楽のリンクを以下に貼ります。
大友さんが舞台の下手に向かって合図を送ると、大きな拍手に迎えられて玉置さんが再登場しました。第一部の白やグレーの明るい衣装からガラリと変わり、第二部は全身黒のシックなスタイルです。その凛とした佇まいは、立っているだけでステージが引き締まるような、圧倒的な存在感がありました。
玉置さんがマイクを手に取り、大友さんと視線を交わすと、いよいよ第二部の本編がスタートします。
10曲目
玉置さんと大友さんが互いに向き合い、静かに呼吸を合わせます。そこからチェロの低音がよく響くストリングスのアンサンブルが始まると、ステージが深い濃紺の光に包まれました。この時点ではまだ何の曲か特定できず、会場には心地よい緊張感が漂いました。
その静かな短編の前奏がふっと切れた瞬間、突如として玉置さんの第一声が放たれました。
忘れようとした…
極限まで研ぎ澄まされた、澄み切った裏声が響いた瞬間、心の中で激しく

アリアだ!
と叫びました。第二部本編の幕開けを飾るのは、アルバム「あこがれ」に収録されている【アリア】です。近年、なかなか実演されることのなかったレア曲の登場に、ステージで繰り広げられる一挙手一投足に対して、のめり込むように集中してパフォーマンスを見届けました。
興奮した心中とは裏腹に、ステージでは歌唱パートに入っても、ストリングスを中心とした落ち着いた編曲が、玉置さんの清らかな歌声を大切に支えていました。玉置さんの歌い方で特に印象的だったのは、サビで見せた裏声から地声への切り替えです。
夕暮れの街角に
や
あ〜なたはいる
といった箇所で、それまでの繊細なムードから一転、音域をグッと上げ、声を張るように地声で歌い上げました。少し苦しそうに、かつ情熱的に響かせるセクシーな歌唱は、コンサートならではの唯一無二のものでした。後者の
あ〜なたはいる
といった1番のフレーズは、1日目と2日目で歌い方に変化が現れました。1日目は前述のように地声で歌い、2日目は原曲と同様に裏声で歌いました。今後の公演では本パートの歌い方がどう移り変わり、そしてスタンダードになっていくか注目したいです。
1番終了後の間奏ではオーボエが主旋律を引き継ぎ、その素朴で温かみのある音色が楽曲の持つ切なさにそっと寄り添います。後奏では、ハープの柔らかな響きと、ストリングスが少しずつ消え入るようなお淑やかな演奏で幕を閉じ、シンフォニック・バラードならではの贅沢な余韻をホールに残しました。
11. 行かないで
お次はシンフォニックコンサートの代表曲で、至福のバラードが続きます。
この2日間も、楽曲は極めてスローなテンポで展開されました。その一音一音を噛み締めるような速度によって、玉置さんの歌声はもちろん、オーケストラが奏でる繊細な音色までもが、かつてないほど鮮明に耳に届きました。特筆すべきは、そのゆったりとした流れの中で際立つアンサンブルの絶妙さです。
あたたかい(※1)あなたに(※1)
触れたのが嬉しくて
のフレーズの合間(※1)で、カウンターとして差し込まれるバイオリンの調べや、サビの
Ah〜(※2)行かないで(※2)行かないで
(※2)で確かに響く打楽器の音。大友さんはこれらの音を的確に引き出し、高弦に向けて華麗に手を差し伸べたかと思えば、サビでは噛み締めるように両手を上下に弾ませて、音の奥行きを創り出していました。
2日目には、さらに興味深い見どころがありました。1番から2番へ移る際、チェロの重低音がこれまでの公演では聴いたことがないほど力強く鳴り響き、そのまま玉置さんの歌声と共演を果たしました。
2日目は2番のサビ、
どんなときでも 離さないで〜〜〜
では、溜め込んできた想いを一気に解き放つような、特に激しい熱唱が披露されました。繊細な裏声と豪快な地声を自在に行き来する玉置さんの歌唱は、まさに圧巻の一言。スローテンポが生み出す幻想的な空気感と相まって、会場全体が深い感動の渦に飲み込まれていきました。
12. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)
ここから会場の空気は一変します。前2曲の繊細なファルセットが光るバラードから打って変わり、ホールには「ワインレッドの心」のリズミカルで骨太なロックの躍動感が流れ込みました。玉置さんはこれまでの感極まるような姿から一転、身振り手振りを交えながら、大友さんに歩み寄ったり距離を置いたりと、自由自在でダイナミックなステージングを見せました。
ラストサビの、
あの消えそうに燃えそうな
ワ〜インレッドの〜
というフレーズでは、2日間で異なるアプローチが見られました。1日目は、喉を震わせるような過激な咆哮が炸裂。聴き手の魂を揺さぶるような力強いシャウトを響かせ、圧倒的な熱量で会場を支配しました。一方の2日目は、普段ならシャウトを締めくくるはずの
ワ〜インレッドの〜おぉ〜⤵︎
という歌声を入れない歌唱に。一見するとリズムを崩しかねない即興的な崩し方に見えましたが、続く
心を写しだしてみせてよ
のフレーズを寸分の狂いもないベストタイミングで乗せてきました。咆哮で圧倒した1日目と、抜群のリズム感覚でさらりと聴かせた2日目。玉置さんの表現の引き出しの多さと、オーケストラを軽やかに乗りこなす唯一無二のセンスが際立つ一幕となりました。
オーケストラが奏でる軽快な間奏がワクワク感を煽り、メドレーは「じれったい」へと移行します。この曲ではブラス隊の助奏が一際勇ましく響き渡り、ロックな躍動感の中にオーケストラならではの格式高いムードを添えていました。
玉置さんの歌唱は、ブラス隊の厚みのあるサウンドに一切引けを取らない、非常に輝かしいものでした。1日目には、最初のサビを歌い終えたところで、感情を爆発させるような
Yeah〜!
というシャウトを披露。その一声からは、玉置さんの胸に込めた熱い想いがひしひしと伝わってきました。
前曲の余韻が長く響き渡る中、オーケストラの雄大な演奏に導かれ、メドレーはいよいよ「悲しみにさよなら」へと移ります。冒頭のサビからAメロの歌い出しにかけて、玉置さんと大友さんは互いに向き合い、呼吸をぴたりと合わせて曲を紡ぎ始めました。大友さんの、身体を左右に揺らしながら腕を弾ませる軽快なタクトが、会場を温かなリズムで包み込んでいきます。
サビで披露された
愛を世界の平和のために
という玉置さんの歌詞アレンジには、客席から大きな歓声が上がりました。特に2日目には、その熱狂が次のフレーズへ移るまで鳴り止まないほどの盛り上がりを見せました。
その後のラストサビでは、玉置さんのジェスチャー一つひとつに万感の想いが宿っていました。
ひとりじゃないさ
や
ひとつになれる
という歌詞に合わせ、客席の隅々まで届くように大きく手を伸ばすその姿で、ホール全体を優しく包み込みました。
最後にはマイクを完全に下げ切り、生の歌声をホールいっぱいに響かせる渾身のノーマイク歌唱を披露。胸に手を当て、祈るように歌い上げた
悲しみに〜さよなら〜
のフレーズで、至福のメドレーは締めくくられました。
演奏終了後の光景も、2日間でそれぞれに感動的なものでした。1日目は、玉置さんがマイクを置き、大友さんが指揮台を降りてから、ガッチリと両手で握手を交わす両者の姿。対する2日目は、溢れ出す感情を抑えきれないかのように、玉置さんはマイクを持ったまま大友さんへ歩み寄り、大友さんも指揮台に立ったままそれを受け止めるという、衝動的で熱い讃え合いが見られました。二人の間に流れる深い絆と素晴らしいパフォーマンスへの自負が、鳴り止まない拍手の中に鮮やかに浮かび上がっていました。
13. JUNK LAND
ハープとピアノが爆速のイントロを奏で、会場は一気に疾走感あふれるリズムに支配されました。この2日間は客席からの手拍子が一切起こりませんでした。観客の誰もが、一音たりとも聞き逃すまいと、ステージから放たれる凄まじいパフォーマンスに全神経を集中させているのが伝わってきました。
超高速で展開された本曲、1日目にはちょっとしたハプニングがありました。2番の冒頭、
ほら今日もポンコツ車の窓を全開にして
というフレーズで、押し寄せる言葉に一瞬舌がもつれる玉置さん。しかし、そこからの立て直しは実に見事で、次々と現れる詞をどんどん捌ききっていきました。対する2日目は、序盤から完璧なコンディションで歌い上げ、楽曲の持つ勢いをそのままに、凄まじい熱量で突き進んでいきました。
あっという間に高速のパートを駆け抜け、転調を経て楽曲がさらなる高地へと向かう中、2日目は玉置さんの気迫が最高潮に達しました。
ガラクタ〜〜〜たちと〜〜〜
限りなく青い大空
そう JUNK LANDで
のパートでは、音程の変化に合わせて指先を天へとピンと突き刺すような鋭いジェスチャーを披露。言葉の一つひとつに魂を乗せ、昂った想いを全身で表現するその姿に、客席の熱気も一段と引き上げられました。
楽曲が最終盤に差し掛かると、玉置さんはオーケストラの伴奏に重層的なフェイクを絡ませ、最後は天を仰ぐような裏声を長く引き伸ばしました。そして迎えた、玉置さんと大友さんが互いに向き合い、呼吸をぴたりと合わせる緊迫の瞬間。大友さんが機を捉えて華麗にタクトを振り上げると、玉置さんが1日目はガッツポーズ、2日目はマイクをグッと引き寄せる動作で完璧にフィニッシュ。その直後、両日ともにマイクが拾った
Yeah〜!
という玉置さんのシャウトは、難曲をやり遂げた充実感と安堵が混じり合ったような叫びとして響き渡りました。
演奏が終わると、二人は熱く抱擁を交わし、互いの健闘を讃え合いました。ここで観客席からは圧巻の拍手が沸き起こりました。2日目には、鳴り止まない拍手の中で大友さんがスッと後方に下がり、主役の玉置さんを一人ステージの前方に立たせて拍手を送り続けました。こうした、マエストロによる主演に花を持たせるような粋な計らいは、この上なく美しい光景として映りました。
14. 夏の終りのハーモニー
前曲の熱狂そのままに、オーケストラの壮大な演奏で曲が始まります。1日目には、イントロが流れた瞬間に客席の一部からどよめきが起こるほど、特別な空気が漂いました。この前奏の間、玉置さんが胸に拳をトントンと当てる姿が両日ともに見られました。それは、この一曲に向けてもう一度気持ちを入れ直すような神聖な仕草で、見守るこちらの身も引き締まる思いでした。
1日目は、1番のサビで玉置さんが2番の歌詞を歌うシーンがありました。入り、
誰よりもあなたが好きだから
のところで、
星屑の間を揺れながら
と歌いました。しかし、続くフレーズでは即座に1番の
素敵な夢あこがれを
へと戻り、何事もなかったかのように旋律を整えました。
ラストサビでは、玉置さんは静かにマイクをテーブルに置き、ノーマイクで歌います。1日目は溢れ出す感情を抑えきれないように両手を客席へ差し伸べ、2日目は直立不動で堂々と、生の歌声をホールいっぱいに響かせました。特に、
忘れず・・・
に〜〜〜〜〜
と最後のトーンへ繋げるまでのタメは、2日目には一層長く力強く保たれ、その圧倒的な声量に会場全体が息を呑みました。
玉置さんが歌い終わるよりも先に、大友さんの指揮によりオーケストラの演奏が再開されます。この日は両日とも、玉置さんの歌声から演奏への引き継ぎがとても早く、歌と楽器がひとつの物語を完結させるような流れでした。驚いたのは2日目、玉置さんが歌い終えた瞬間に拍手が起こらず、深い静寂が保たれたことです。そのおかげで、最後に残されたオーケストラの繊細な旋律までを、一音も逃さず聴き取ることができました。
最後は演奏の終了と同時に、玉置さんが両手をしっかりと握り合わせる充実のジェスチャー。見事なパフォーマンスをやり遂げたという、確かな手応えを感じさせる姿をステージの最前方で披露しました。
曲後、ステージでは感動的なカーテンコールが始まりました。下手側に大友さん、上手側に玉置さんが並び立ち、両者が固い握手を交わして互いの健闘を讃え合います。その姿に応えるように、客席からは割れんばかりの大きな拍手が降り注ぎました。
賞賛に包まれながら、玉置さんを先頭に大友さんが続く形で一度ステージを後にします。場内の拍手は一向に鳴り止まず、ほどなくして二人は再びステージへと姿を現しました。1日目、玉置さんは自身の胸を拳でトントンと叩き、万感の想いをファンに伝えてから静かに退場。2日目も、再登場した二人は客席の熱気をしっかりと受け止めたあと、名残惜しさを残しながらも速やかにステージを後にしました。
その後、今度は大友さんが一人で再びステージに戻ってきました。ステージ中央で客席に向けて丁寧に一礼すると、いよいよアンコールが幕を開けました。
15. 田園
ストリングス隊の演奏で、ベートーヴェンの「田園」が流暢に奏でられて曲がスタート。そこへ木管楽器が玉置さんの「田園」の主旋律を重ねていき、やがて前奏が始まると、待ちわびた観客は一斉に総立ちとなります。玉置さんが再びステージに姿を現した瞬間、会場の熱気は最高潮に達し、割れんばかりの手拍子が曲を後押ししました。
2日目には、Aメロに入ってからも観客の手拍子が鳴り止まず、大友さんが左手を客席に向けて厳しく制する場面がありました。サビに入ると、玉置さんの歌い出しを合わせるために半身となってこちらを向いた大友さんの指揮が、客席に向けた手拍子再開の合図のようにもなり、再び会場が一体となって揺れ動きました。
注目の歌詞アレンジは、両日とも
愛はここにある NHKホールにある
でした。字余りなフレーズをパワフルに、語気を強めて歌い上げた瞬間、客電がパッと全灯となり、会場の隅々までが光に包まれました。1日目は明るくなった客席に向けて玉置さんが指を差し、2日目は過激なシャウトを織り交ぜて感情を爆発させながら間奏の発声パートを歌い上げました。
そして迎えた楽曲のクライマックス。玉置さんと大友さんが正対し、オーケストラの全奏に負けない圧巻のシャウトが放たれました。最後は大友さんがダイナミックに指揮を振り上げ、玉置さんがマイクを高らかに掲げる完璧なタイミングで終幕しました。
この瞬間、1日目はマイクを置いた玉置さんと指揮台を降りた大友さんがガッチリと握手を交わし、2日目はそのまま熱く抱き合って互いの情熱を讃え合いました。鳴り止まない拍手の中、まさに壮観のラストシーンが繰り広げられました。
曲後、ステージ上では二人の深い信頼関係が伝わるシーンが繰り広げられました。1日目は、ステージ中央で二人が親密に話し込む姿が印象的でした。大友さんが客席の上層階を指差すと、玉置さんもそれに応えるように上の階のファンへ向けて大きく手を振ります。2日目はさらに結束が深まり、二人はステージ前方でしっかりと手を繋いで並びました。そして、空いたもう片方の手を揃えて上層階へと伸ばし、会場全体へ感謝を届けるような美しい光景を見せました。
こうしたひとときを経て、大友さんは再び指揮台へ、玉置さんはマイクを手に、いよいよ次なる曲へと向かいます。
16. メロディー
オーケストラによる短く繊細な前奏で曲が始まります。玉置さんの歌声がホールに響き渡った瞬間、1日目は静寂が続き、観客が固唾を呑んで聴き入る穏やかな滑り出しとなりました。一方の2日目は、歌い出しと同時に客席から拍手が沸き起こりました。
玉置さんのボーカルは、2日間で異なる彩りを見せたように感じました。1日目は冒頭から力強さがみなぎり、低音から高音まで芯の通ったパフォーマンスが展開されます。対する2日目は、聴く者の胸が締め付けられるような、非常に感傷的で繊細な歌声が際立ちました。
2番が終わり間奏に入った瞬間、2日目には客席から熱い拍手が送られました。玉置さんはその拍手に丁寧に一礼して応えると、マイクをテーブルに置きます。1日目も同様にノーマイクの準備を整えてラストサビへ。オーケストラが音を絞る中、マイクを介さない玉置さんの生の歌声がダイレクトにホールを支配しました。剥き出しの感情が詰まったその歌声は、聴衆の心に真っ直ぐに突き刺さります。
クライマックスの、
泣かないで〜〜〜〜〜
というロングトーンでは、歌声の伸びに合わせてオーケストラが再び熱を帯び、見事な共鳴を見せました。この2日間は、歌声が消える瞬間と演奏が締めくくられるタイミングが寸分違わず一致し、玉置さんと大友さんの深い信頼関係が最後の一音まで貫かれていました。最後は、
あの歌は心から聞こえてるよ
と、優しく、そして力強く歌い上げ、曲のラストをしっとりと締めくくりました。
演奏が終わると、会場は割れんばかりの拍手に包まれ、玉置さんと大友さんはステージ前方で互いの健闘を讃え合いました。1日目は大きな拍手に送られながら一度二人でステージを後にし、熱烈な再登壇ののちに次曲への準備に入りました。一方で2日目は退場することなくそのままステージに残り、二人でじっくりと話し込む姿が見られました。
その後、大友さんがコンマスに合図を送りながら指揮台に登ると、ステージには心地よい高揚感が走ります。玉置さんは少し遅れてマイクを手に取り、いよいよ楽曲は最後の一曲に移りました。
17. ファンファーレ
大友さんの優雅な指揮により、フルートの震えるような前奏が響き渡ると、会場は一気に期待感で沸き立ちました。そこへハープの連弾や打楽器の連打が加わり、曲が鮮やかにアップテンポへと転調した瞬間、玉置さんが客席へ向けて両手を大きく広げるポーズを披露。それがまるで観客への指揮のように機能し、場内には地鳴りのような手拍子が巻き起こりました。
Aメロでは、ストリングス隊の指弾きによる軽快なリズムに乗せて、玉置さんがテンポ良く歌い進めます。
そのまま生きていきなさい 行きなさい
というフレーズとともにブラス隊が輝かしく鳴り響いてサビに突入すると、ステージのバックはゴージャスな黄色に染まり、まさに「ファンファーレ」の名に相応しい祝祭的な空間が広がりました。
1番終了後の間奏では、玉置さんの
ヘイ!
というシャウトが会場を鼓舞します。1日目はタイミングを計り直して二度力強く叫び、2日目は絶妙なタメを効かせて一発で決めるなど、その時々のライブ感が刻まれました。
2番を歌い終えアウトロに入った瞬間、客電がパッと全灯。玉置さんが上層階から下層階へとゆっくり手をスライドさせ、客席の隅々にまで想いを差し伸べました。こうした、舞台照明も一体となって作り上げたフィナーレは、最も感動的な名シーンとして記憶に強く刻まれました。
後奏の途中、一度演奏が静まりティンパニがリズムを刻む場面では、あまりの熱演に曲の終了と確信した観客からフライング気味に拍手が沸き起こる一幕もありました。しかし、そこから再びオーケストラが大きく盛り上がり、真のフィナーレへ。大友さんが高く手を振り上げ、玉置さんがマイクを天に掲げるガッツポーズ。二人のマエストロがシンクロしたかのような完璧な幕引きに、会場の興奮は頂点に達しました。
演奏が終わると、両者は互いに駆け寄り、熱い抱擁を交わしました。2日間にわたって見届けたこの壮大なシンフォニック・コンサート。その最後の一音が消えた後、NHKホールには、これ以上ないほどの多幸感と深い余韻がいつまでも漂っていました。
「ファンファーレ」の余韻が冷めやらぬ中、会場は2日間とも熱狂的なカーテンコールに包まれました。1日目は一度二人が退場したのち、玉置さんが大友さんを呼び戻す形で再登場。軽やかな足取りでステージの上手端まで向かい、オーケストラを指し示して敬意を表する玉置さんの姿に、会場からは温かな拍手が起こりました。
2日目の拍手は一際大きく、再登場を願う観客の想いがホールを震わせるほどでした。それに応えるように戻ってきた二人は、ステージ中央でじっくりと話し込み、何度も何度も両手で握手を交わしました。その間、オーケストラもその場で静かに待機しており、会場全体が二人の一挙手一投足を見守る、濃密な時間が流れていました。
どちらの日も、玉置さんはノーマイクで

ありがとう〜!!!
と魂を込めて叫び、ガッツポーズを決めました。1日目には大友さんがコンマスの肩を半ば強引に抱いて退場を促すユーモラスな一幕があり、客席を笑顔に。2日目も大友さんはコンマスと固い握手を交わし、楽団に向けて「これでお開き」というような合図を送って、大団円を演出しました。
圧巻だったのは2日目の最後です。楽団員がステージを去り始めたその時、玉置さんが三度、姿を現しました。上手端まで駆け寄り、楽器を片付けている奏者たちにもリスペクトを送る姿に、残っていた楽団員からも拍手が送られるという、奇跡のような光景が広がりました。遅れて現れた大友さんとともにしばらく健闘を讃え合うと、最後は客席へ向けて大きなエアハグを見せ、愛に満ちた仕草でラストを締めくくりました。
2日目の終演時刻は18時07分。いつも以上のロングバージョンとなったカーテンコールは、この2日間の成功を物語る最高のフィナーレとなりました。いつまでも漂う余韻を場内に残したのち、ようやく館内アナウンスが流れ終演。充実感にあふれた2日間が閉幕しました。
以下、本公演のセットリストです。
4. セットリスト
billboard classics
玉置浩二
LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026
“Fanfare”
4月17日・18日
NHKホール
セットリスト
【一部】
1. ファンファーレ(管弦楽)
2. 歓喜の歌(管弦楽)
3. GOLD
4. キラキラ ニコニコ
5. いつもどこかで
6. 純情
7. MR.LONELY〜サーチライト(メドレー)
8. Friend
【二部】
9. 歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」(P.I.チャイコフスキー)
10. アリア
11. 行かないで
12. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)
13. JUNK LAND
14. 夏の終りのハーモニー
【アンコール】
15. 田園
16. メロディー
17. ファンファーレ
5. 公演後の様子
公演後の会場の様子です。
4/17 1日目





4/18 2日目




この2日間のNHKホール公演で、何よりも驚きだったのは、ツアー中盤にして行われた大胆なセットリストの変更でした。これまでの本ツアーにおいて、象徴的な存在であった「純情」が、第二部の幕開けから第一部の中盤へと移動。その変化に伴い、第二部の1曲目として新たに「アリア」が組み込まれるという、予想だにしない展開となりました。
新しくセットインした「アリア」は、原曲が発表された当時よりも一層玉置さんの表現力が深まり、円熟味を増した歌声がとても際立っていました。その生の響きを感じられる時間は、まさに「至福」の一言に尽きます。
本日からは沖縄での2日間が控えていますが、この新しい構成が定着するのか、あるいは再び元の形に戻るのか。はたまた、さらなる変化が待ち受けているのか。今後も目が離せないステージが展開されそうです。
こばかず

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