先日の4月23日・24日、billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026 “Fanfare”@那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場公演に参加しました。
指揮:大友直人
管弦楽:琉球交響楽団
※本投稿では、公演のセットリストや演出を記載します。本ツアーは15都市25公演の規模で行われます。初日を迎えていない方や、ネタバレに抵抗のある方はご注意ください。
1. 公演前の様子
公演前の会場の様子です。
4年連続の沖縄開催#玉置浩二#Fanfare#那覇文化芸術劇場なはーと pic.twitter.com/ioVSWKIsJV
— こばかず (@anzen_koji_1982) April 23, 2026











2023年、”Navigatoria”公演でシンフォニックコンサートとしての沖縄初演を果たしてから、早いもので3年が経過しました。シリーズ4年目の開催となった今年、再びこの南の地の舞台を訪れることができました。
年を追うごとに会場の熱気と盛り上がりは増し、同時にコンサートとしてのクオリティーも極限まで高まり続けている沖縄公演。今年もあの唯一無二のパフォーマンスに再会できるという非常に大きな高揚感を胸に、那覇の会場へと足を進めました。
2. 第一部の様子・各曲の感想

今回の沖縄公演は、2日間ともにステージを間近に感じる素晴らしい座席に恵まれました。
1日目は1階席前方の上手端。目の前にスピーカーが設置されており、玉置さんの歌声とオーケストラの演奏がダイレクトに、かつ凄まじい音圧で響いてくる座席でした。続く2日目は、人生初となる1階中央ブロックやや上手寄りの最前列。遮るものが何一つない、まさに目と鼻の先に玉置さんが位置する夢のような距離感でした。
玉置さんはパフォーマンス中、指揮者との連携を図るため、下手側よりも圧倒的に上手側を向いて歌う傾向があります。1日目の上手端、そして2日目の最前列やや上手側。この両日は、玉置さんの情熱的な歌声を真正面から受け止めることができる、最高の座席となりました。
1階前方という至近距離だからこそ、玉置さんがステージに姿を現した瞬間の空気の震えから、一挙手一投足、そして退場時の余韻まで。そのすべてを余すことなく視界に収めることができた、濃密な第一部を振り返ります。
定刻の18時00分、舞台左右の扉がゆっくりと開かれ、琉球交響楽団のメンバーが次々と入場します。続いて、コンサートマスターが一人で姿を現しました。これまでの3年間、沖縄公演でゲストコンサートマスターを務めた大阪交響楽団の森下幸路さんは、同楽団の定期演奏会と重なったため今回は不在でした。

入念なチューニングが終わり、静寂がホールを包み込む中、マエストロの大友さんが登場します。1階前方の座席からは、その立ち姿がこれまで以上に大きく、威厳を持って迫ってきました。コンマス、そしてトップサイドの奏者と力強く握手を交わした大友さんは、客席へ一礼して指揮台へ登ります。すると、オーケストラ全体に深い安心感を与えるかのような穏やかな眼差しで楽団一帯を見渡しました。その後、すっと目を閉じ、ホール内のわずかなざわつきさえも消えていくのを待つかのように、深く精神を統一させていました。こうしてしばらく会場の空気を一つに束ねたのち、静かに指揮の構えに入ります。
1. ファンファーレ(管弦楽)
ティンパニがざわつくような単調なリズムを刻み、コントラバスが重低音を響かせて曲が始まります。何かが始まる予感を孕んだ空気がホール全体に駆け巡る中、ホルンが導入部を奏で、滑らかなストリングス隊の合奏へと引き継がれていきました。
続くフルートによる前奏の主旋律は、この2日間、非常に印象的な響きを放っていました。フルート特有の華奢なイメージを覆すような、芯の通った力強い音色。奏者の個性が光るこのパートが、楽曲に確かな生命力を吹き込んでいました。
その旋律をストリングスの高弦が受け継ぐと、楽曲はさらに熱を帯びていきます。1日目は低弦の隊列が目の前に位置していたこともあり、コントラバスが刻むリズムを足元から伝わる振動のように、よりダイレクトに感じることができました。大地を踏みしめて行進するような堂々たる響きが、曲を力強く押し進めていきます。
最後は金管楽器も加わり、オーケストラ全体が一体となったゴージャスなフィナーレへ。全奏による圧倒的な音の厚みが空間を満たし、長く保たれた持続音が深い余韻を残しながら、静かに次曲へと移っていきました。
2. 歓喜の歌(管弦楽)
前曲「ファンファーレ」の持続音がホールに漂う中、その余韻を縫うようにホルンの渋い一音が重なり、鮮やかに曲が切り替わります。直後にはバイオリンの音色が高らかに響き渡ると、会場は一気に華やかな雰囲気に包まれました。
この曲の最大の見どころは、やはり大友さんの緻密かつダイナミックな指揮にあります。前方座席、特に最前列という至近距離から見上げるマエストロのタクトは、これまでにないほど鮮明にその意図が伝わってきました。ソロパートでは、極めて小さな指揮で奏者一人ひとりのタレントを引き出し、アンサンブルに転じれば、大胆かつ滑らかな動作でオーケストラ全体のハーモニーを見事に編み上げていきます。
特に痺れたのは、終盤のフルートとチェロによる二重奏から、バイオリンが主旋律を引き継ぐ一連の流れです。大友さんは、まずソリストの繊細な重奏を慈しむようにリードし、そのパートが終わるや否や、即座に上手側のコントラバスへと身体を向けてリズムを促します。そして間髪入れず、反対側のバイオリンセクションに向けて鮮やかにタクトを振る。その一連の動作は流れるように美しく、惚れ惚れするほど完璧なコントロールでした。
これらの演奏順のカメラワークを、3年前に同会場で行われた公演の映像で確認できます。
ラストは全奏による圧巻のフィナーレへ。大友さんが両手を高く掲げて熱量を高めたのち、 1日目は右手を力強く振り回すダイナミックな指揮で盛り上げ、2日目は胸の前でクロスさせるという魂の込もったポーズで締めくくられました。同時にストリングス隊の弓が天に向かって一斉に舞い、豪快かつ華麗な幕引きとなりました。
序曲が終わると、大友さんが下手に向けて合図を送ります。そのタクトに導かれるように、いよいよ玉置さんがステージに姿を現しました。
第一部の衣装は、黒のアウターとパンツに白のインナー、そして胸元には白とグレーのスカーフが重層的に織りなされた、非常に洗練された装いです。2日目の最前列では、こちらに向かって歩み寄ってくるその姿が視界を占拠し、普段以上の圧倒的な存在感と威厳をもって迫ってきました。
ステージ中央に進んだ玉置さんは、大友さんと両手でガッチリと力強い握手を交わします。このときの両者の表情には、すでに何かをやり遂げたかのような、深い充実感と揺るぎない自信が漲っていました。
玉置さんが客席に向き直ると、割れんばかりの拍手がホールを揺らします。特に最前列で体感するその拍手の渦は、これまでのどの公演よりも凄まじいボリュームとなり、文字通り全身を包み込むような衝撃として耳に届きました。玉置さんが静かにマイクを手に取ると、場内は一気に深く暗転。静寂が支配する中、至高の時間が幕を開けました。
3. GOLD
2日目は、曲間の規制入場により、このタイミングで複数組の観客が客席へ案内されました。大友さんは客席の方を向き、全ての観客が着席するのを静かに待ちました。その傍らで、玉置さんもまた入場してくる観客の方へと視線を送り、ふっと穏やかな笑みを浮かべていました。至近距離から確認したその表情は、どこまでも温かく慈愛に満ちており、会場全体を包み込むような優しさが溢れていました。観客への深い敬意が感じられる、静かで美しい待ち時間でした。
客席の準備が整うと、大友さんがゆっくりと指揮の構えに入り、いよいよ楽曲が始まりました。玉置さんの第一声、
行こう…遠くまで
という歌声が放たれた瞬間、そのあまりの深みに全身が震えました。1日目の上手端席では、目の前のスピーカーからダイレクトに届く真っ直ぐな歌声に圧倒されましたが、2日目の最前列では、スピーカーの音だけでなく、玉置さんから発せられる生の響きが空気を伝って直接胸に突き刺さるような感覚がありました。
この曲では、玉置さんと大友さんの緊密なアイコンタクトが、至近距離だからこそより鮮明に確認できました。各フレーズの入りだけではなく、両者が正対してタイミングを測り、深く頷き合う場面が幾度となく見られました。例えば曲中盤、
あの頃の二人に 辿り着くから
の一節では、二人がしっかりと視線を交わし、阿吽の呼吸で音を揃えていく光景が印象的でした。
間奏では、玉置さんが極めて微かな裏声を伴奏に添える一幕がありました。普段の座席ではオーケストラの音に溶けてしまうような繊細な歌声が、最前列でははっきりと、生々しく届きました。
ラストの
笑い…ながら…
行こう…
という締めくくりの一節も、普段より一層豊かな響きを伴って自席へと届き、その余韻が消えゆく完璧なタイミングで大友さんの後奏が始まります。最後は、大友さんが右手を胸の前でそっと握りしめるポーズに合わせ、玉置さんもまた力強くマイクを握りしめ、静かな情熱の中に幕を閉じました。
4. キラキラ ニコニコ
冒頭、身体の奥底から響き渡るような玉置さんの低音が、極めて豊潤な響きを伴って客席まで届きました。1日目の上手端席では、目の前のスピーカーから放たれる音の密度の濃さに圧倒されましたが、2日目の最前列では、歌声が空気を震わせて直接肌に触れるような、生々しい質感に心を奪われました。
本曲で最も衝撃を受け、全身に鳥肌が立ったのは、2日目に見た間奏のノーマイクによるフェイクでした。玉置さんがマイクを身体から大きく遠ざけ、
Yeah〜!Oh〜!
と解き放たれた瞬間、マイクを介さない生の歌声がダイレクトに突き刺さりました。続く
(全力)全力で笑って
のパートでも同様の現象が起こり、もはやオンマイク時よりも生声の方が大きく響いているのではないかと錯覚するほどの声量が届きました。この音圧を浴びるような体験は、まさに最前列ならではの特権でした。
楽曲の終盤、
もし疲れたら
僕がおぶってあげるよ〜〜〜
では、全身を細かく震わせながら、限界まで音を伸ばす玉置さんの気迫に圧倒されました。その後、玉置さんと大友さんが
キラ・キラ・ニコ・ニコ
というリズムを丁寧に合わせ、一瞬訪れる静寂。そこで放たれたアカペラの
だね…
という一言も、最前列では決して囁きではなく、核を持ったパワフルな歌唱として胸に迫ってきました。
後奏では、オーケストラの重厚な演奏に一歩も引けを取らないシャウトが炸裂。1日目のラスト、演奏が静まっていく中で声に出さずとも浮かべた玉置さんの感傷的な表情、そして2日目の終盤に聴かせた繊細な裏声のニュアンス。大胆な力強さと、消え入りそうなほど微細な表現が共存する、芸術的な幕切れとなりました。
5. いつもどこかで
ホールは静穏な空気に包まれ、玉置さんの清らかな歌声が染み渡ります。深みがありながらも純白な声質が印象に残りました。
2日目の序盤、とりわけ胸を打たれたシーンがありました。
やさしく咲く小さな花になって
という一節。音程がふわりと上がる
花になって
の「は」の瞬間、玉置さんの声が繊細に裏返るように響きました。その一瞬の揺らぎに込められた情感があまりに美しく、聴いているこちらの心まで震えるような感動を覚えました。
曲中盤、金管楽器によるファンファーレ調の間奏が始まると、アンサンブルは一気にゴージャスな彩りを帯びます。その輝かしい演奏に呼応するように、以降は玉置さんの歌唱も熱量を増していきました。後半、身体を激しく震わせながら一音一音を絞り出す姿は、まさに全身全霊、心で歌っていることを雄弁に物語っていました。
そして迎えたクライマックス、
僕が君を〜〜〜〜〜
という圧巻のロングトーンでは、最前列ならではの体験が待っていました。玉置さんが徐々にマイクを下げながら歌うにつれ、スピーカー越しの音と、直接放たれる生の声が交差する臨界点が訪れました。マイクを介さない肉声が空気を裂いて客席まで届いた瞬間、圧倒され、全身に凄まじい鳥肌が立ちました。
このロングトーンの締めくくりでは、玉置さんと大友さんは目を合わせることなく、呼吸だけで歌い終わりを完璧に合致させていました。玉置さんが全身をわずかにオーケストラに向け、耳を傾けながらオーケストラの残響を察知し、音が完全に消えた瞬間に入った
包んでいる…
の見事なタイミング。そして、アカペラで語りかけるように置かれた
よ…
という最後の一言。ステージ上で繰り広げられる、コンマ一秒を争うような緻密な駆け引きが見事でした。二人の素晴らしいコンビネーションが生み出したその静かな終焉に、深い慈愛の余韻がいつまでもホールに漂っていました。
6. 純情
曲前、大友さんがヴィオラのトップ奏者へ静かに目配せを送った瞬間、前回のNHKホール公演と同様に「純情」が始まることを確信しました。ヴィオラの独奏が先行し、木管楽器が寄り添うように重なっていく豊かな前奏がスタートすると、その優しい旋律が会場を穏やかに包み込みます。
歌唱パートに入ると、玉置さんの低音の重厚感に息を呑みました。身体の奥底から発せられるようなコクのある響きは、今の玉置さんだからこそ到達できる深みそのものでした。2日目の最前列では、玉置さんが両手で大切そうにマイクを握りしめ、一言一言を噛み締めるように歌う姿が目の前にありました。
驚かされたのは、サビにおける表現の対比と、卓越したマイクワークです。それまでの抑えた歌唱から、一気に力強さを増す
大バカもので なんのとりえもなくても
の一節。2日目は、その瞬間の声量変化に合わせてマイク位置が完璧にコントロールされており、計算し尽くされた極上のサウンドとして客席に届きました。圧倒的な経験に裏打ちされた高度なテクニックに、ただただ圧倒されるばかりでした。
サビの締めくくりでも、1番と2番で実に見事なコントラストを描いていました。1番の
その言葉だけ 投げ出さずいた〜
では、消え入りそうなほど繊細なトーンで。対照的に2番では、
その言葉だけ 投げ出さずいた〜ぁあ〜⤴︎
と、パワフルにかつ普段よりも長く音を伸ばすアレンジを披露。その声の伸びはどこまでも力強く、ホールの隅々まで情熱を叩きつけていました。
照明演出とともに迎えるクライマックスも、最前列の視点では、普段とは違った趣を放っていました。
オレのお守り くしゃくしゃの純情〜〜〜
というロングトーンに合わせ、照明がオレンジから鮮烈な水色へと切り替わりますが、この日はその変化がとても緩やかに、かつ白に近い色彩に感じられ、叫ぶ玉置さんの姿がこの上なく神々しく映りました。その後は感情を剥き出しにした
かあちゃん
というシャウトから、声を震わせた
おかあさん
という囁きへ。一節の中で劇的にトーンを変化させた、魂を揺さぶるパフォーマンスでした。
1日目の曲後、玉置さんは胸に手を当ててから客席へ伸ばし、その後にタオルでそっと鼻を拭いました。ステージで歌いながら、玉置さん自身の心にも熱いものが込み上げていたのだと、その仕草が物語っていました。感情の叫びと、繊細な静寂。その両極端な表現が一曲の中に凝縮された、あまりにも感動的な一幕でした。
7. MR.LONELY〜サーチライト(メドレー)
軽快なオーケストラの演奏とともに、メドレーの幕開けを飾る「MR.LONELY」が始まります。2日目の最前列で開始早々に心を射抜かれたのは、前奏に重なる玉置さんの
Foo〜
というノーマイクの裏声でした。非常に繊細で透明感あふれるその響きは、普段の座席ではオーケストラの音色に溶けてしまうほど微細なもの。それがダイレクトに客席まで届くという、至近距離ならではの贅沢な洗礼から楽曲は動き出しました。
歌唱パートに入ると、軽やかに、かつテンポ良く歌い進めていきます。1日目の上手端席では、オーボエの旋律以上に、ヴィオラが刻む指弾きの音が際立って聴こえました。弦が弾ける小気味よいリズムが、楽曲に生き生きとした躍動感を与えているのが手に取るように分かります。
曲がラストサビへ向かうにつれ、玉置さんの歌声は一転して激しさを増していきます。
いつでも どんなと〜〜きでも〜〜
のフレーズでは、全身を小刻みに、かつ激しく震わせながら歌い上げる気迫に圧倒されました。そして、締めくくりの
元気で〜〜〜いるから
では、マイクを腹の位置まで大きく遠ざけ、圧倒的な声量でロングトーンを披露。1日目も2日目も、その声はホールの隅々まで、そして自席の胸の奥深くまで真っ直ぐに突き刺さりました。
後奏に入ると、それまでの熱狂を鎮めるように再び繊細な裏声を伴奏に添える玉置さん。力強さと儚さが共存する、あまりに見事なメドレー一曲目のフィナーレでした。
前曲の余韻を繋ぐように、木管楽器の柔らかな旋律から「サーチライト」が始まります。1日目の前奏中には、少し印象的な光景がありました。玉置さんがそっとタオルを手に取り、鼻を拭いました。第二部でも言及しますが、この日は曲中でも鼻を気にする仕草が何度か見受けられました。
歌唱パートに入ると、玉置さんの歌声に寄り添うオーケストラのグラデーションが実に見事でした。序盤は重厚な低弦が支え、曲が進むにつれて高らかに響く高弦へと主役が移り変わっていく、鮮やかな色彩の変化がありました。
2日目は、サビで見せた玉置さんの感傷的な表現が印象に残りました。
かな〜らず〜 僕を照らす
と声を震わせながら裏声で紡がれる一節。そのあまりに繊細で、祈りにも似た歌声は、聴き手の心に静かに、けれど深く浸透していきました。
クライマックス、
サーチライトはそうなんだ
君なんだ 君なんだ
のフレーズでは、玉置さんは客席に向けて大きく手を広げました。上層階から下層階へと、一人ひとりの観客を包み込むように丁寧に手を差し伸べ、惜しみない愛を示すその姿に、会場の隅々までが温かな光で満たされていくようでした。
歌唱を終えたあとの佇まいもまた、記憶に刻まれました。大友さんが手を握る指揮終了の動きに合わせ、玉置さんも胸に手を当てるジェスチャーで応えます。自身のパートは終わっていても、オーケストラが奏でる最後の一音まで、全神経を集中させて耳を傾ける。とても真摯な玉置さんの姿がステージにありました。
8. Friend
木管楽器がパワフルな演奏で曲がスタート。2日目の最前列、上手寄りの座席からは、チェロの重低音が地響きのように迫り、木管楽器の旋律と重なり合う壮大な前奏が身体を震わせました。やがて、ステージを照らしていた濃紺の照明がゆっくりと絞られ、静寂がホールを支配しました。
一瞬の間ののち、静かに響くピアノの三音。暗闇の中、玉置さんを白く、大友さんを黄色く照らし出すシンプルなライティングが、二人の圧倒的な存在感を際立たせます。大友さんは極めて小さな動作でピアノの伴奏を導き、玉置さんはその音色に寄り添うように、言葉を一つひとつ丁寧に置いていきます。閑寂な空間で繰り広げられるこの共演は、まさに至福の時間でした。
サビに差し掛かると、一変して玉置さんの真骨頂であるロングトーンが炸裂します。上手側を向いて真っ直ぐに放たれるその歌声は、両日ともにダイレクトにこちらへ届きました。特筆すべきは、その繊細なコントロールです。1回目のトーンで圧倒的な声量を見せたかと思えば、2回目には抑えめに、美しいビブラートを伴いながら歌声を収束させていく。寄せては返す波のような歌唱のダイナミズムが胸に響きました。
2番に入ると、目の前に並ぶ低弦隊の指弾きが心地よいリズムを刻み、楽曲にテンポが生まれていきます。ラストサビでは、玉置さんの歌声に金管楽器の輝かしい響きが重なり、第一部の成功を祝うようなゴージャスなフィナーレへ。玉置さんは最後のロングトーンを歌い上げながら、マイクを右肩の近くまで遠ざけ、ガッツポーズをするような姿でその声を響かせました。
歌い終えた玉置さんは、直立してバックに流れる後奏をじっくりと聴き届け、完璧なタイミングでステージを後にします。降り注ぐような拍手の中、マイクを手に堂々と下手へと退場するその背中。その後もオーケストラによる重厚なアウトロが奏でられ、大友さんが右手をゆっくりと握る合図で、音の余韻が静かに消えていきました。
最前列という特別な視点が生んだ、かつてないほどの濃密な時間。一曲一曲の密度があまりに高く、実際以上の長ささえ感じられた第一部が、最高の形で幕を閉じました。
3. 第二部の様子・各曲の感想
休憩を挟み、いよいよコンサートは後半戦へ。約20分間のインターバルののち、那覇の夜をさらに深く彩る第二部が幕を開けました。
舞台の両袖から、再び琉球交響楽団のメンバーがステージへと姿を現します。心地よい緊張感が漂う中、楽器の音色が重なり合う入念なチューニングが行われ、準備は整いました。
再び下手から大友さんが登場。客席からの温かな拍手に迎えられ、管弦楽の豊かな響きとともに、第二部が動き出しました。
9. 交響的前奏曲2025(山下康介)
第二部の幕開けは、バイオリン・ヴィオラ・チェロによる弦楽四重奏の流暢な調べから始まりました。王道的な交響曲の気品を感じさせるストリングス隊の響きが、ホールの空気を一段と引き締めます。
楽曲が進むにつれ、その旋律には沖縄の風土を思わせる独特な色彩が混じり合っていきました。軽快なリズムが刻まれ始めると、オーケストラ全体が一体となった全奏が祝祭的な盛り上がりを創出。まるで沖縄音楽の「カチャーシー」を彷彿とさせるような、快活で躍動感あふれるムードが会場を満たしていきました。
中盤、フルートやクラリネットといった木管楽器によるソロパートへ移ると、先ほどまでの熱狂から一転して穏やかな時間が流れます。表情豊かな木管の音色が、楽曲に美しいアクセントを添えていました。
後半は、冒頭の繊細な弦楽合奏と、金管楽器が力強く主張する全奏が目まぐるしく入れ替わる圧巻の展開へ。一曲の中にいくつものモチーフが凝縮された、重層的な世界観が繰り広げられます。ここでは打楽器奏者がパンデイロを打ち鳴らし、楽曲の骨格となる力強いリズムを刻む姿が、その音圧とともにダイレクトに伝わってきました。
クライマックス、大友さんが何度も両手を大きく広げる豪快な指揮に対し、琉球交響楽団が渾身の音で応えていきます。最後は大友さんが右手を激しく振り回す熱狂的なモーションでフィニッシュ。同時にストリングス隊の弓が華麗に宙を舞い、力強くも美しい管弦楽の幕引きとなりました。
オーケストラの演奏が終わり、大友さんが下手へ合図を送ると、いよいよ玉置さんが再びステージに登場しました。
第二部の衣装は、インナーまで全て黒で統一されたオールブラック。第一部の爽やかな装いとはまた違い、ずっしりとした威厳と圧倒的なオーラが全身から溢れ出しているようでした。
会場は、玉置さんの再登場を待ちわびていた観客からの大きな拍手に包まれます。玉置さんがゆっくりとマイクを構えると、照明が落ちてステージは暗転。静まり返ったホールに、いよいよ第二部の本編が始まろうとする特別な緊張感が漂いました。
10. アリア
曲が始まる前に玉置さんと大友さんがじっと目を合わせ、互いの準備が整ったことを確かめ合う静かな時間が流れました。
大友さんの指揮でストリングスのアンサンブルが始まると、ステージは深い濃紺に染まり、ホールは一瞬で神聖な空気に包まれます。短い前奏が止まると、すぐに玉置さんの
忘れようとした…
という歌声が入りました。その第一声はどこまでも清らかで、混じり気のない澄み切った裏声。その繊細な響きに、一気に物語の世界へと引き込まれていきました。
1番の序盤はストリングスのシンプルな伴奏で進みますが、2回目の
忘れようとした それでもあきらめず
必ず戻れると 信じた
からはコントラバスの指弾きが加わります。最前列で聴くその低音は心地よいリズムを生み出し、バラード曲の中に確かな躍動感を与えていました。
この曲の最大の見どころは、サビで見せた玉置さんの自在な歌い回しです。
(※1)朝陽の中に
(※2)夕暮れの街角に
(※3)あなたはいる
1番のサビ、(※1)の入りは落ち着いたトーンで歌い始めますが、(※2)で一転。グッと音程を上げたパワフルな地声へと切り替わります。原曲以上に声量を増し、緊迫感さえ漂わせるこの歌い方は圧巻の一言でした。そこから続く(※3)では再び繊細な裏声へと帰着し、一節の中で描かれる鮮やかな抑揚に心を揺さぶられました。
オーボエの温和な旋律による間奏を挟み、2番のサビではさらに力強い一面を見せます。
花散る道に
(※4)粉雪の空港に
(※5)あなたを見る
(※4)を地声で張り上げると、1番では裏声だった(※5)のフレーズまで、そのまま地声で力強く歌い切りました。続くラストサビへ向けて、一気に熱量を押し上げていくような玉置さんの意思を感じるパフォーマンスでした。
ラストサビでは、
夏の谷間に
真冬の浜辺にも
(※6)あなたはいる
最後の一節、(※6)を再び1番と同様に美しい裏声で締めくくると、後奏ではストリングスとハープの調べが重なり、お淑やかに、そして静かに曲が結ばれました。
この2日間、サビの歌い回しが大きなハイライトでした。前回のNHKホール公演からセットに追加された同曲のサビの歌い方について、公演後に私は以下のように言及しました。
今後の公演では本パートの歌い方がどう移り変わり、そしてスタンダードになっていくか注目したいです。
前回は、この新しいアプローチにどこか試行錯誤しているような印象も受けましたが、この2日間、玉置さんの姿に迷いは一切ありませんでした。地声と裏声を鮮明に使い分け、晴れ晴れと歌い上げるその姿に、このスタイルがこれからの「アリア」の新たなスタンダードになっていくのだと確信させられる、見事なパフォーマンスでした。
11. 行かないで
大友さんが刻む、極めてゆったりとしたテンポで物語が始まります。曲が進むにつれて感情が高ぶり、リズムが走りそうになるところを、終始スローテンポを保ち続ける大友さんの指揮。その揺るぎない制御が、楽曲に底知れない深みを与えていました。
暗転したステージに、玉置さんを白く、大友さんを黄色く照らし出すシンプルなライティング。二人のシルエットだけが浮かび上がるその光景は、両者の姿を大きくクローズアップしました。
この曲でも、地声と裏声のコントラストが極致と言えるほどの輝きを放ちます。1番の
いつまでもずっと離さないで
という激しいシャウトの直後、震えるように忍ばされる
Ah〜
という裏声。真っ直ぐに突き刺さる地声から、儚く揺れる裏声へ。前曲「アリア」以上に鮮明となった歌声の対比は、まさに圧巻の一言でした。
2日目の最前列で特に目を奪われたのは、玉置さんの驚異的な体幹の強さです。2番やラストサビの盛り上がり、
どんなときでも/いつまでもずっと
離さないで
から
Ah〜
とマイクを胸の位置でピタリと固定したまま放たれるシャウト。身体の芯が微塵もブレることなく、凄まじい声量をコントロールするその姿からは、圧倒的なエネルギーと鍛え抜かれた技術の凄みを感じました。
オーケストラの演奏もまた、シンフォニックコンサートの真髄を見せつける充実した内容でした。2番終了後の間奏、オーボエの素朴なソロからストリングスの重厚なアンサンブルへと繋がる場面では、大友さんが楽団に向けて弦をかき鳴らすような情熱的な指揮を披露。そして後奏では、コンサートマスターによるバイオリンソロが響き渡ります。華やかさの中にどこか哀愁を帯びたその調べが、物語の終わりを惜しむように溶けていきました。
12. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)
閑寂なバラードの世界から一転、会場にはシンフォニックロックの躍動的なムードが漂い始めます。大友さんの指揮がハープに向けて鋭く伸びたのを合図に、軽やかなリズムで「ワインレッドの心」が幕を開けました。
それまでの厳かな雰囲気とは一変し、玉置さんの歌唱には小気味よいリズムが宿ります。身体を上下に揺らし、弾むようにステップを踏みながら歌うその姿は、視覚的にも動のステージを体現しており、前2曲とはまるで別人のような軽快さでした。その姿に引き込まれるように、ステージと客席の両方に確かな高揚感が広がっていきました。
メドレー1曲目の締めくくり、ラストサビの
あの消えそうに燃えそうな
ワ〜〜インレッドの〜
では、それまでの軽やかさを凌駕する強烈なシャウトが炸裂。オーケストラの音圧を突き抜けるようなその力強い一撃が、続くメドレーの熱狂へと力強く舵を切りました。
メドレーは、高揚感をさらに加速させる「じれったい」へと突入します。間奏中、随所に放たれる玉置さんのフェイクは、最前列ということもあり凄まじい音圧で迫ってきました。
歌唱パートに入ると、上手寄りの座席では、目の前に並ぶコントラバスが刻む重低音が地響きのように身体を揺さぶります。ブラス隊の輝かしい響きと、弦楽器が叩き出すロックなリズム。オーケストラの格式高さと野生的な熱量がぶつかり合う、圧巻のアンサンブルが展開されました。
1日目のサビでは、
じれったい 心を溶かして
じれったい 身体も溶かして
のパートを、
じれったい 心を燃やして
じれったい 身体も燃やして
と、ラストサビの歌詞を織り交ぜて情熱的に歌い上げるハプニングもありましたが、2日目は一点の曇りもない完璧な歌唱。特に2日目は、楽曲が最高潮に達したラストの
もっと もっと知りたい
において、これまでにない新たなアレンジを披露しました。ささやくような語り口で紡がれる遊び心に満ちたメロディーは、自由で新しい世界観を感じさせるものでした。
雄大なオーケストラの旋律に導かれ、メドレーはいよいよ「悲しみにさよなら」へと移ります。2日目の冒頭、強く胸を打たれたのは玉置さんと大友さんの対峙でした。曲が始まると同時に、両者は真っ直ぐに正対。ここまでの楽曲でも入りのタイミングを合わせる場面はありましたが、これほど至近距離で、かつサビを丸ごと向き合って進む姿は初めてのことです。玉置さんに全神経を集中させてタクトを振る大友さんと、そのタクトを一身に受け止める玉置さん。最前列から見た二人の瞳は力強く光り、確かな充実感に満ちあふれていました。
1番のサビの終わり、玉置さんは
愛を世界の平和のために
と歌詞をアレンジして歌い上げました。その瞬間、会場からは大きな拍手が沸き起こり、玉置さんは胸に手を当て、丁寧に頭を下げて応えます。その温かな佇まいに、胸が熱くなりました。
1日目のラストサビでは、非常に意外なシーンが強く印象に残りました。
泣かないでひとりで
(※)その胸にときめく
愛を叶えられたら
(※)の部分でトランペットのファンファーレが高らかに響く際、大友さんの力強い左手の指揮に注目していると、間接視野にある光景が飛び込んできました。それは、玉置さんがふっと手で鼻を気にするように触りながら歌う姿です。普段、歌唱中に集中を乱すことは滅多にない玉置さんだけに、こうした一幕は間近でステージを見つめる私にとって鮮烈な記憶として刻まれました。
そして、楽曲のフィナーレはマイクを完全に下ろしたノーマイク歌唱へ。伴奏が極限まで絞られる中、ステージから直接届く玉置さんの肉声は、スピーカーを通した音よりもずっと力強く、ボリューミーにさえ感じられます。そこからさらに、
泣かないでひとりで
ほゝえんで見つめて
あなたのそばに(※)いるから
(※)の瞬間には伴奏が止まり、完全なアカペラへ。静まり返ったホールに玉置さんの生の声だけが響き渡り、続く短編の間奏中に放たれた
Yeah〜!Oh〜!
というシャウトには、全身に凄まじい鳥肌が立ちました。
最後は、
悲しみに〜さよなら〜
というラストフレーズを堂々と歌い終えると、玉置さんはマイクを置き、大友さんは指揮台を降りて、両者はガッチリと、そして固く握手を交わしました。1日目には、その後にタオルで大げさに鼻を拭く仕草を見せて客席の笑いを誘う一幕もありましたが、2日目はお互いのパーフェクトな演奏を称え合うような、神々しいまでの信頼関係がそこにありました。
鳴り止まない拍手と、いつまでも冷めやらぬ感動。メドレーが幕を閉じても、観客からの惜しみない賞賛がホールを包み続けていました。
13. JUNK LAND
オーケストラが刻む爆速のリズムとともに、疾走感あふれる「JUNK LAND」がスタートします。1日目は、客席の一部から自然発生した手拍子が独特の緊張感を誘いました。ほんの局所的なものでステージに届くほどではありませんでしたが、玉置さんの激しいシャウトやオーケストラの快活なリズムに合わせて再燃しかねない危うい空気感。それをヒヤヒヤしながら静観していましたが、幸いにもそれ以上強まることなく、楽曲は鮮やかに駆け抜けていきました。
2日目の最前列では、眼前で繰り広げられる目まぐるしいオーケストレーションが放つ緊張感に圧倒されます。玉置さんはその音の波をしっかりと聴き取り、
どっち行く? どっち行こうー
といった入りを一言一言丹念に合わせるなど、凄まじい集中力でパフォーマンスを牽引していました。
曲が進むにつれ、玉置さんのジェスチャーも冴え渡ります。1番の
祈ってる人のその前で
では左手を深く胸に当て、
愛してる人のその前で
では客席全体へ愛を届けるように大きく手を伸ばす。その立ち姿には、楽曲に込められた力強いメッセージが宿っていました。
転調後のラスト、それまでの重厚で暗かった照明が一気に白く明るい光へと切り替わります。最前列で浴びるこの鮮烈なコントラストは、まさに閉塞感を突き抜けて広がる世界でした。
限りなく青い大空
のフレーズでは、ステージ最前方まで移動し、全身で背伸びをするように一直線に指を伸ばす玉置さん。その圧倒的な存在感に、視界が真っ青な空へと開けていくような感覚を覚えました。
フィナーレでは、玉置さんと大友さんががっちりと向き合います。大友さんが踏ん張るようにオーケストラの演奏を引き出すと、玉置さんがそれに応えて裏声をどこまでも引き伸ばしていく。最後、腕を巻き上げるような大友さんの指揮と同時に、玉置さんがマイクを引く動作で楽曲はパーフェクトに完結しました。
曲が終わった瞬間、二人は熱い抱擁を交わします。興奮を隠せない客席からは地鳴りのような拍手が沸き起こりました。大友さんが主役である玉置さんを立てるように指を差せば、玉置さんもまた大友さんを称えるように手を伸ばし、互いの健闘を讃え合います。
すると、2日目のステージからは「ドンドン」と力強い音が響いてきました。琉球交響楽団のメンバーたちが、足を踏み鳴らしてこの素晴らしいパフォーマンスを称えていたのです。その音は地鳴りのように客席まで届き、この夜を象徴するような、非常に強調された名場面となりました。
本曲のあとに客席から浴びせられた拍手はいつまでも鳴り止まず、なかなか次曲に向けて暗転されないほどでした。いや、暗転した後でさえも、その賞賛の響きはしばらくの間、ホールを揺らし続けていました。
14. 夏の終りのハーモニー
高揚感に満ちあふれた「JUNK LAND」の余韻を抜け、ステージには再びシンフォニーの王道とも言える、豊潤で穏やかな響きが広がります。多彩な表情を見せたメドレーや、爆走するような疾走感を経て辿り着いたこの曲は、まるで壮大な物語の終着点を見ているようでした。
歌唱が始まると、玉置さんの深みのある低音がホールを優しく包み込みます。1番のサビの締めくくり
いつまでもずっと
忘れずに〜〜〜
では、マイクを少しずつ遠ざけながら、消え入りそうなほど繊細なロングトーンを披露。そのコントロールの妙は、至近距離で聴くとより一層鮮明に、その凄みが伝わってきました。
そして、クライマックスは圧巻のノーマイク歌唱です。玉置さんはマイクを丁寧にテーブルへ置くと、一気に声量を引き上げ、生の歌声を解き放ちました。1日目は声を枯らすほどに感情をぶつけ、魂を削り出すような熱唱。一方、2日目の最前列で浴びたその声は、驚くほど高いエネルギーに満ち、スピーカーを通さない肉声がダイレクトに空気を震わせて届きます。ラスト、
いつまでもずっと
忘れずに〜〜〜〜〜
のロングトーンの最中、大友さんの指揮が静かに動き出し、絶妙なタイミングでオーケストラの伴奏が重なる瞬間は、まさに鳥肌もの。1日目は伴奏が終わるまで静寂を保ち、観客全員がその調べに耳を澄ませていたのが印象的でした。対して2日目は、歌い終わりの瞬間に客席から大きな拍手が沸き起こりました。
最後はオーケストラのエンディングに合わせて、玉置さんが両手を身体の前で強く握りしめる充実のポーズ。3年前の“Pastorale”公演でこの地を訪れた際にも見せた、今や象徴的とも言えるあのジェスチャーとともに、至福の時間は幕を閉じました。
曲が終わるとホールがパッと明るくなり、拍手の渦の中でカーテンコールが始まります。大友さんが一歩オーケストラ側へ下がり、玉置さんがステージ中央に立つと、降り注ぐ賞賛を一身に浴びるその姿は一際大きく、神々しいほどの存在感を放っていました。
二人が一度退場したあとも拍手は鳴り止まず、次第にその音はリズムを揃えた手拍子へと変わっていきます。この2日間は座席位置の関係で、二人が舞台袖に入り、さらにその奥を右へ曲がっていく瞬間まで見届けることができました。ステージ裏へと消えていく余韻まで共有できたような、実に贅沢な心地でした。
その熱いコールに導かれるように、二人が再びステージへ。大友さんが下手側、玉置さんが上手側の位置でガッチリと握手を交わすと、会場のボルテージは最高潮に達しました。
その後、三度現れたのは大友さん一人でした。

今回は一人ですよ☝️
というようなジェスチャーを見せながらステージ中央へ。楽団員を全員起立させ、オーケストラを代表して深く一礼しました。
鳴り止まない拍手はやがて、アンコールへの期待を込めた静かな熱狂へと変わっていきます。大友さんが再び指揮台に登り、いよいよ物語の最終章が始まろうとしていました。
15. 田園
ベートーヴェンの「田園」が流暢なストリングスの演奏で始まると、オーボエやクラリネットといった木管楽器が、少しずつ玉置さんの「田園」の旋律を織り交ぜていきます。静寂の中に
生きていくんだ〜
それでいいんだ〜
のメロディーが奏でられると、客席は確信に満ちた熱気に包まれました。管弦楽が打楽器の連打で華やかに締めくくられると、下手袖の扉が開き、玉置さんが足早に登場。2日目の最前列からは、この一連のドラマチックな流れを克明に確認することができました。その瞬間、会場は総立ちとなり、割れんばかりの手拍子が玉置さんの再登場を歓迎します。
2日目は、Aメロに入ると、大友さんが凛とした動作で客席へ左手をかざし、手拍子を鮮やかに制止。パタリと静まり返ったホールに、フルートや鉄琴の軽快な助奏が響き、玉置さんは大友さんの指揮と呼吸を合わせながら快活に歌い進めていきました。
サビに差し掛かると、会場の熱量は再び爆発します。玉置さんは目の前を力強く指差しながら、
愛はここにある 沖縄にある
と歌詞をアレンジ。この瞬間、客電が点灯してホール全体がパッと明るく広がり、ステージと客席が文字通り一つに溶け合いました。
2番以降もその勢いは衰えず、ラストサビでは
生きて・いくんだ
それで・いいんだ
と一言一言の語気を強める、魂のこもった歌唱を見せます。そしていよいよ圧巻のクライマックスへ。玉置さんが大友さんに急接近してリズムを合わせると、二人は至近距離で正対。そこから、ホールを震わせる圧倒的なロングトーンが放たれました。
トーンの途中で客席から大きな拍手が沸き起こりますが、2日目の歌声はその喝采にさえかき消されることなく、真っ直ぐに突き抜けて届きました。大友さんが大きく振りかぶるダイナミックな指揮で最後の一音を締めくくると、玉置さんも同時に右手のマイクを天高く掲げます。その壮観なラストシーンに、会場の盛り上がりは最高潮に達しました。
曲が終わると、会場は嵐のような賞賛に包まれました。玉置さんと大友さんは充実感に満ちた表情で並び立ち、客席に向けて大きく手を伸ばします。大友さんが高層階の客席を仰ぎ見るようにして手を差し出すと、玉置さんも呼応するように同じ方向へ向けて力強く手を振りました。その視線の先を自席から振り返ると、多くの観客が弾けるような笑顔と大きな身振りで応えており、会場全体が喜びの波に飲み込まれていくような、温かくも熱い光景が広がっていました。
ひとしきり拍手を浴びたあと、二人は何かを確かめ合うように親密に言葉を交わします。やがて大友さんが再び指揮台へと登り、玉置さんがマイクを手に取り直すと、いよいよコンサートは次の一曲へと向かいます。
16. メロディー
「田園」の熱狂が冷めやらぬ中、観客が総立ちのまま「メロディー」のイントロが静かに流れ始めます。激しい高揚感から一転、穏やかなバラードへと移り変わるこの瞬間、会場には何とも言えない多幸感が満ち溢れました。
1日目は、
あんなにも好きだった…
と歌声が入った瞬間、客席から拍手が起こり、それが波のように再燃していく場面がありました。
玉置さんの歌声は、バラードであっても非常に力強く、芯の通ったエネルギーに満ちていました。サビのロングトーンはもちろん、静かに語りかけるパートの一言一言にも、並々ならぬ気概が込められていました。
2番が終わり、間奏で玉置さんが丁寧にマイクをテーブルに置くと、いよいよノーマイク歌唱によるラストサビへ。オーケストラが音を絞る中、ステージ正面から玉置さんの生の歌声がダイレクトに響き渡ります。
ノーマイク歌唱では、基本的に真っ直ぐ前を見据えて歌う玉置さんですが、2日目の最前列では一瞬、目が合ったような錯覚に陥る場面がありました。音が絞られたオーケストラの演奏を確認するため、目の前に位置するコントラバスの隊列を一瞥し、玉置さんへと視線を戻したその瞬間、
遠い空流されても
のフレーズで、玉置さんがこちらを向いて歌い上げました。まさに自分に向けて歌われているかのようなその光景に、大きく心を奪われました。
クライマックスの
泣かないで〜〜〜〜〜
では、圧倒的なロングトーンが炸裂します。トーンの途中からオーケストラの演奏が劇的に厚みを増し、玉置さんの歌声と共鳴を果たす瞬間、凄まじい音圧が迫力を持って押し寄せました。最後は、
あの歌は心から聞こえてるよ
と力強く、かつ慈しむように丁寧に歌い上げ、壮大な物語の幕を閉じました。
曲が終わると、会場はいつまでも鳴り止まない拍手と賞賛に包まれました。
1日目は、玉置さんと大友さんが互いに肩を寄せ合い、親密に語り合う姿が非常に印象的でした。しばらくすると、大友さんがコンマスに合図を送り、再び指揮台へと向かいます。玉置さんがマイクを手に取ると、期待に満ちた大きな拍手が沸き起こりましたが、大友さんはそれに対して落ち着くように促す穏やかな仕草を客席に向け、ゆったりとしたモーションで次なる旋律へと指揮を始めました。
2日目の最前列で見届けたのは、一つひとつの拍手に対して、何度も頷くように丁寧に礼を返す玉置さんの姿です。ステージ最前方の中央に立ち、充実感に満ちた表情を浮かべるその佇まいは、見守るこちらの心まで充足感で満たしてくれるほどでした。名残惜しさを抱きつつも、大友さんが指揮台に登り、玉置さんも再びマイクを握ります。最高の時間は終わることなく、さらなる感動を予感させながら、パフォーマンスは続いていきました。
17. ファンファーレ
フルートの優雅な旋律がホールに響き渡り、今ツアーのタイトル曲「ファンファーレ」の前奏が始まると、待ってましたと言わんばかりの大きな拍手が沸き起こります。1日目はその熱気で会場が揺れるようでしたが、2日目の最前列では、拍手の渦中にあっても可憐なフルートの音色が鮮明に届いてきました。
ここで大友さんが両手を横に広げ、徐々に高めていくドラマチックな指揮。ハープの連弾や打楽器の連打が一気に曲の色彩を塗り替えて転調を果たすと、玉置さんは身体を大友さん側へ傾けてリズムを確かめたのち、大きく両手を広げてステージに立ち尽くし、客席へ手拍子を煽ります。その姿はまるで、集まった観客すべてを指揮しているかのようでした。
歌唱パートに入ると、ストリングス隊の弾むような指弾きが玉置さんの歌声を軽快に引き立てます。サビ前の
そのまま生きていきなさい 行きなさい
では、ブラス隊による厚みのあるファンファーレが上昇気流を作り、サビへと突入。黄色のライトがバックの壁面を駆け回り、ゴージャスな輝きの中で
愛に向かって行きなさい
と歌う玉置さんが、力強く手を差し伸べました。
2番に入ると、ストリングス隊がトレモロ奏法で緊迫感を醸成し、そこにトライアングルや鉄琴の繊細な響きが重なるという、1番との鮮やかな対比が見事でした。サビの
千切れた手綱と絆を 結いつけて守っているから
のフレーズでは、歌いながら左手をマイクを持った右手へと引き寄せ、絆を結びつけるようなジェスチャーを披露。歌詞の世界を視覚的にも深く表現していました。
そして圧巻の後奏では、客電が全灯してホールが光に包まれます。玉置さんは上層階から順に、一人ひとりを掬い上げるように丁寧に手をスライドさせていきました。2日目、その手が最下層の上手側へ向けられた瞬間、私が手を振り返すと、玉置さんはほんの一瞬ストロークを止め、こちらへ手を向け直してからスライドを再開させました。「メロディー」での出来事に続く、この日二度目の奇跡のような応酬に、私の心はこれ以上ないほどの歓喜で満たされました。
最後は、重厚なオーケストラの演奏が大友さんの華麗なタクトでピタリと止まり、同時に玉置さんがマイクを天高く突き上げました。その壮観なフィナーレに、会場全体のボルテージは最高潮に達し、割れんばかりの歓声と拍手がいつまでも鳴り響いていました。
曲後はオーケストラのメンバーからも惜しみない拍手が贈られ、会場全体が一つになって互いの健闘を讃え合う、至福の光景が広がります。
両日、ステージ中央に立った玉置さんは、マイクを通さず生の声で

ありがとう〜!!!
と叫びました。その魂の叫びはホールの隅々まで真っ直ぐに届き、観客の心を震わせます。
1日目、一度二人が退場し、楽団の退場が始まったその時、玉置さんが再びステージに姿を見せました。一気に沸き返る観客。玉置さんは上手端まで移動してオーケストラにリスペクトの念を送り、中央ではコンマスと熱い握手を交わします。さらに下手端まで駆け寄ると、袖に向かって大きく手を上げ、マエストロを呼び込みました。戻ってきた大友さんの手を引き、主役の二人が再びステージ中央に並び立つと、ホールの盛り上がりは絶頂に達しました。
2日目の最前列では、その熱狂をさらに肌身で感じることになりました。再登場した玉置さんと大友さんが親密に話し込む中、大友さんの口元が

本当にありがとうございました
というように動いたのが見え、言葉を超えた充実感がこちらまで伝わってきました。
その後、一度ステージを後にし、三度舞台に現れた玉置さんは、コンマスとがっちりと握手を交わすと、上手端の客席へ向けて満面の笑みで手を振ります。そして中央に戻ると、客席へ向けて愛溢れるエアハグを贈りました。その腕は、さらにオーケストラの方へも向けられ、ステージにいるすべての人を抱きしめるような大きな愛が放たれました。
退場の間際、玉置さんは下手端でもう一度立ち止まり、その場に立ち尽くすオーケストラに向けて深々と手を伸ばします。そのバトンを受け取るように、最後はコンマスがお茶目な表情で客席に両手を振り、大団円となって熱い沖縄の2日間が幕を閉じました。
終演を告げる館内アナウンスがどこかで流れたはずですが、最前列からではそれさえも聞き取れないほど、ホールはいつまでも鳴り止まない拍手と熱気に包まれていました。シリーズ4年目となった沖縄開催。そこには、言葉では言い尽くせないほどの大きな愛が、確かに広がっていました。
以下、本公演のセットリストです。
4. セットリスト
billboard classics
玉置浩二
LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2026
“Fanfare”
4月23日・24日
那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
セットリスト
【一部】
1. ファンファーレ(管弦楽)
2. 歓喜の歌(管弦楽)
3. GOLD
4. キラキラ ニコニコ
5. いつもどこかで
6. 純情
7. MR.LONELY〜サーチライト(メドレー)
8. Friend
【二部】
9. 交響的前奏曲2025(山下康介)
10. アリア
11. 行かないで
12. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)
13. JUNK LAND
14. 夏の終りのハーモニー
【アンコール】
15. 田園
16. メロディー
17. ファンファーレ
5. 公演後の様子
公演後の会場の様子です。





沖縄での2日間は、言葉では言い尽くせないほど充実した、至福の時間となりました。両日ともに素晴らしい座席に恵まれましたが、特に2日目は自身初となる最前列。玉置さんのパフォーマンスを、遮るもののない至近距離で見届けられたことは、大きな財産となる濃密な体験でした。
今回の公演を通じて、何よりも強く胸に刻まれたのは、玉置さんが一曲一曲に注ぎ込む凄まじいまでの集中力です。大友さんやオーケストラの発する音へ、ほんのわずかに身体を傾けてリズムの機微を捉えようとする仕草。ホールの響きを瞬時に判断し、ミリ単位でマイクの位置を調整して最適解を導き出す、その研ぎ澄まされた感覚。最前列という特別な場所から見上げたその姿には、プロフェッショナルとしての凄みと、音楽に対する真摯な態度が溢れていました。
これまでも、玉置さんの歌声が常に全力であり、心がこもっていることは自分なりに理解していたつもりでした。しかし、間近で目にしたその実態は、想像を遥かに超えるものでした。
・両手でマイクを大切そうに握りしめ、一言一句を慈しむように歌う静寂
・剥き出しの感情をそのまま叩きつけるような叫び
・全身を小刻みに震わせながら放たれる、圧倒的なロングトーン
ダイレクトに伝わってくるその圧倒的な表現力に、もはや感動を通り越して畏怖の念すら抱きました。呼吸をすることさえ忘れてしまうほどの緊迫感に満ちたステージは、この上なく素晴らしいものでした。
こばかず

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