玉置浩二 with 故郷楽団 ファンファーレ!!(10/24・25)@フェニーチェ堺の感想とセットリスト

ブログ
この記事は約22分で読めます。

先日の10月24日・25日、玉置浩二 with 故郷楽団 Concert Tour 2026 ファンファーレ!!@フェニーチェ堺 大ホール公演に参加しました。

※本投稿では、公演のセットリストや演出を記載します。本ツアーは21会場30公演の規模で行われます。初日を迎えていない方や、ネタバレに抵抗のある方はご注意ください。

今回は2公演分をまとめて記載します。

1. 公演前の様子

公演前の会場の様子です。

2026年、フェニーチェ堺では玉置さんの公演が三本行われることになりました。年明けの1月8日・9日に振替公演として組まれた昨年のソロツアー「blue eggplant field」、3月9日のシンフォニックコンサート“Fanfare”、そして本ツアーのこの2日間です。同じ会場で一年のうちに三本もの公演が行われるのは、玉置さんの音楽活動において極めて異例のことでした。

2. サポートメンバー

本公演に参加するサポートメンバーは以下の通りです。

(敬称略)
・キーボード:トオミヨウ
・ギター:秋山浩徳
・パーカッション:中北裕子
・ベース:千ヶ崎学
・ドラム:濵﨑大地
・サックス/フルート:武嶋聡
・1stバイオリン:吉田宇宙
・2ndバイオリン:名倉主
・ヴィオラ:大辻ひろの
・チェロ:稲本有彩

残すところわずかとなった今年のツアー。本公演ではBa.千ヶ崎さん(全15公演参加)とDr.濵﨑さん(全3公演参加)が最後の参加となりました。

堺市の隣、和泉市出身のVa.大辻さんにとっては、今回が故郷公演です。9月15日・16日の大阪フェスティバルホール公演の後には、自身のInstagramで生まれ故郷について言及していました。この2日間はその故郷へさらに近づいた形となりました。

様々な想いを胸に秘めながら演奏するメンバーたちの姿にも、自然と注目が集まりました。

3. 第一部の様子・各曲の感想

10/24 1日目の座席
10/25 2日目の座席

1日目の座席は3階席上手端、2日目の座席は1階席後方上手端でした。

1日目はステージに対してかなりの角度がつき、客席から深く見下ろす格好になりました。さらに真上には4階席のブロックが重なっており、その圧迫感から視野も狭く感じられました。

2日目も1日目と同様、真上に2階席のブロックが重なっていましたが、それほどの圧迫感はありませんでした。ステージも奏者が見切れることなく、全体を見渡すことができました。

開演時刻は1日目が17時30分、2日目が16時。両日とも定刻どおりに公演がスタートしました。

1. ファンファーレ(Instrumental)

幕開けを告げたのは、武嶋さんのフルートが奏でる主旋律です。透き通った音色が、客席へと静かに広がっていきました。この瞬間、左右から放たれた白いライトがステージの空間を真横に貫くように照らし、神秘的な光景が浮かび上がりました。終盤には濵﨑さんのドラムの連打も加わり、少しずつ熱を帯びていく仕上がりとなりました。

2. あこがれ(Instrumental)

打楽器のロールがシンプルに刻まれ、曲が動き出します。弦とピアノの演奏で本編に入っても、武嶋さんのフルートが曲を盛り立てても、主役は終始打楽器でした。最終盤は演奏のスピードをぐんぐんと加速させ、インスト曲を締めくくりました。

3. 希望の光

インストゥルメンタルの序曲から繋がるように、トオミさんのシンセサイザーの音が場内を満たしていきます。前曲の終了後に客席から拍手が起こらないのは、この持続音があるためです。

ここで玉置さんが姿を見せます。そっと歌い始めると、深みのある歌声が一直線に耳へ飛び込んできました。ほぼ無伴奏の中で歌われるボーカルは、1階席でも3階席でも距離をものともせず、しっかりと自席まで届きました。

4. 海路

この曲で目を見張るのは、各楽器と玉置さんの歌声、さらには照明までもが連動して作り上げる緻密な連携です。1番の、

雨の日は街がキレイだね
少し淋しそうだし(※1)
待っていよう(※2)雲の切れ間が
茜色に染まるまで

というパートでは(※1)の位置で千ヶ崎さんのベース、(※2)の位置で秋山さんのギターが差し込まれました。

2番終了後の間奏はドラムとストリングスが立て続けに加わっていきます。ここで玉置さんが大きく叫びます。1日目はこのとき、バンドのパフォーマンスに納得するようにうなずいていた姿が目に留まりました。

そして最後は、

成れの果て 僕を知り 愛になる

で照明がストンと落ち、玉置さんの姿だけを浮かび上がらせました。3階席から見下ろしたこの光景も相まって、非常にメリハリの効いた一曲となりました。

5. ムダな汗(Instrumental)〜R-『★』指定

冒頭は中北さんのソロパフォーマンスです。2日間ともに鳥笛を吹きながら、シンプルに打楽器を叩き上げました。

ピアノと弦の合奏で「結界」のイントロが流れ出すと、玉置さんがシャウトを放ちます。マイクの前に立ちながらも、上手方向を向いてのパフォーマンスでした。客席からは玉置さんが大きく開けた口のラインをしっかりと確認でき、正面を向いて歌うとき以上の迫力が伝わってきました。

本編に入ると、秋山さんのエレキギターが小刻みにリズムを取りながら、曲を推進していきます。玉置さんもリズミカルに歌い上げていきました。2日目は1階席の観客がほんのまばらに立ち上がり始め、部分的に手拍子も起こるなど、どこか盛り上がりを秘めたまま曲が進んでいきました。

この曲には明快な注目ポイントが数多くあります。1番のラスト、

網にかかったチョウチョを捕って
空へ返せと教えられたろう

では白いチョウチョが舞っていくスクリーン演出とシンクロするように、玉置さんがグイグイと右手を上げていきました。まるで「一丁上がり」といわんばかりの軽快なジェスチャーでした。

2番終了後の間奏では玉置さんと秋山さんによるギターセッションが繰り広げられます。2日目は秋山さんがかなり早いタイミングで、フライング気味に玉置さんの元へ近寄っていきました。

そして後奏は弦カルテットと秋山さんのギターがクロスする演出です。玉置さんはそのタイミングを知らせるように一叫び入れた後、両端に位置する両者に向かって手を伸ばしました。この瞬間、ライティングも刹那に入れ替わり、奏者の姿をこれ以上ないほどに際立たせました。

6. 愛してんじゃない

口火を切ったのは、武嶋さんのテナーサックスソロです。輝かしい黄金色のライトがその姿を照らす中、一気にムーディーな音色が立ち上っていきました。

本編に入ると、ベースとドラムのリズム隊が地を這うような重い演奏音を鳴らします。そこへ玉置さんの低音ボイスが重なり、深みのあるグルーヴが形づくられていきました。

2番からは武嶋さんのサックスが助奏を加えていきます。ジャズやブルースを思わせる雰囲気の演奏は、円熟味を増した現在の玉置さんの歌声と非常に相性の良いものでした。

曲のラストは玉置さんが過激に叫びながら

愛してんじゃない

とリフレインするパートです。この歌唱フォームに、2日間の変化が見られました。1日目は腰を前後に振りながら、2日目はマイクをグッと自分の元へ引き寄せ、スタンドを傾けながら歌い上げました。2日間とも、気持ちのこもったパフォーマンスでした。

後奏は濵﨑さんのドラムの独壇場となります。2日間ともに、スネアを軽快に連打する始まりから、少しずつ重厚感とスピード感を増していく展開でした。迫力あるドラム捌きからは確かな鼓動が伝わってきました。最後の参加となったためか、このソロパフォーマンスには両日ともに過去の公演より長い時間が取られていました。

2日目にはドラムスティックを荒々しく後ろへ放り投げ、気持ちを全面に押し出す姿も見られました。こうした熱い想いに感化されてか、Vn.吉田さんはエンディングの締めくくりをスタンディングで弾奏し、昂ったステージの熱が伝染していく様を見せました。

7. ショコラ

熱狂が渦巻いたステージから一転、千ヶ崎さんのベースがソロで落ち着いた音を聴かせます。濵﨑さんに続き、千ヶ崎さんもこの2日間が最後となるメンバーです。このパフォーマンスにも、普段以上に長めの時間が設けられました。過去の公演では終始抑えた音色をじっくりと聴かせるスタイルが特徴的だった千ヶ崎さんのソロでしたが、この2日間はところどころで芯の通った音も鳴らしました。

そしてエッジの効いた濵﨑さんのスティックカウントで、曲の本編が動き出します。玉置さんはエルヴィスマイクを両手で包み込むように持ち、前屈みになって歌い進めました。この独特な歌い方は、ユニークな形状をしたエルヴィスマイクを用いるからこそ見られる歌い姿でもありました。サビからはさらにこの格好が顕著になり、マイクに吹き込むように裏声を震わせました。

2番では玉置さんがさらに独特な歌い方も覗かせ、

口唇をとがらせてゆっくりと
さめるのを待つ

のところで程よくタメを作りながら、フレーズに合わせてうなずきつつ歌い上げました。また、語尾を

ゆっくりと〜おぉ〜⤵︎

と自然に二音下げていくメロディーでなぞります。このさりげないアレンジがあまりにも流暢で、うっとりするほど麗しい旋律でした。

曲の終了後はアイコニックなエルヴィスマイクを使った演出が繰り広げられます。玉置さんがマイクに接吻くちづけをし、そのリップ音までも場内に響かせました。1日目は二回、2日目は三回、客席に向ける角度を変えながらキスをしてみせました。特に2日目の三回目は大きな音が生まれ、すぐさま観客から黄色い声援が沸き起こりました。

8. MR.LONELY

秋山さんのエレキギターが鳴り渡ります。2日目は興奮した観客の声援が鳴り止んでからほんのわずかな間を置いて演奏が入り、このタイミングが絶妙でした。

本編ではサビにおける玉置さんの歌い方に2日間で変化が出た印象です。1日目は裏声が、2日目は地声が主体となっていました。特に2日目はラストサビ、

何もないけど 君のために
野に咲く花のように

で、以前よく見せていた、シャウトしながら音程を上げていく歌い方も飛び出しました。久々に目の当たりにしたこの歌い方のインパクトに、ゾクッとさせられました。

アウトロは玉置さんがノーマイクで叫びます。マイクから完全に離れ、唯一伴奏としてピアノを弾いていたトオミさんの方へと近づいていき、骨太な歌声を響かせました。

9. やせっぽちの星

トオミさんの繊細なピアノ演奏が曲の幕開けを飾ります。今にも泣き出しそうな、物悲しさを孕んだ張り詰めた旋律が場内を包みました。

2日目は玉置さんの歌声が感傷を帯び、胸が締めつけられるような切なさを纏っていました。1番のラスト、

ずーっときみのことばかり 考えているよ

では声量が落ち、わずかに声を詰まらせながら歌いました。

ここまでピアノの伴奏のみで進んできた曲に、この直後、弦カルテットの間奏が加わります。哀愁漂う弦の音色が、センチメンタルなムードをいっそう色濃いものにしました。

曲のラストも、玉置さんの悲壮感ある歌声で締めくくられます。その歌声が乗せられたのは、

ずーっときみの 幸せを 歌っているから

のフレーズです。一言一句を噛み締めながら、スローテンポで歌う玉置さん。このパートはトオミさんのピアノが伴奏で寄り添いました。両者はアイコンタクトを交わしながら、互いにうなずいてフレーズの入りのタイミングを計り、息のピッタリ合った姿で第一部を締めくくりました。

4. 第二部の様子・各曲の感想

約20分間のインターミッションを経て、第二部の幕が上がりました。

10. 希望の光(Instrumental)

まずは武嶋さんのフルートが、

また出口のない この迷路の中
もう破れそうな この地図は捨てよう

の歌詞のメロディーを奏で、その透明感のある音色が場内に染み渡りました。

続いてアンサンブルに移ると、秋山さんのギターが一歩前に出て、

ここからだ ここからだ ここからやるんだ
さっきまでのこの男に さあ、ケリをつけて

の主旋律を担います。弾むように軽快な演奏が、客席へと運ばれてきました。

そして曲がもう一巡し、旋律が吉田さんのバイオリンへと引き継がれます。今にも音が割れてしまうのではないかと思うほどの、強烈な高音が鳴り渡りました。

11. 花束じゃなくキミといたい

ここで玉置さんが再びステージに現れます。トオミさんのピアノ伴奏に乗せ、エルヴィスマイクを手にじっくりと歌い上げていきました。極限まで演奏が抑えられた張り詰めた空気の中、フレーズ間のブレスまでも捉えたパフォーマンスに息を呑みました。

一方で、玉置さんの歌声にわずかな力強さが覗く場面もありました。それが

(1番)
愛を求めて 愛に救われ 愛を探して
愛が見えなくなって

(2番)
愛に傷つき 愛に包まれ 愛を受け止め
愛が変わっていくの

(ラスト)
愛を捧げて 愛を信じて 愛を重ねて
愛が生まれていくの

のパートです。ここでは玉置さんが想いをぶつけるように歌い上げ、迫力ある姿が垣間見えました。

12. 命の宿り

吉田さんがスッと立ち上がります。重厚感のあるバイオリンのソロフレーズを心を込めて念入りに奏で、そのまま曲のイントロも演奏しました。

本曲ではスクリーンに霧のかかった森林の映像が厳かに投影されます。このとき、バンドメンバーの姿も影となってスクリーンに映り込み、演出との一体感が生まれました。特に3階席からはステージに対して角度があるため、スクリーンの下側に伸びるように映るメンバーのシルエットがよく見えました。

玉置さんは前曲から続いてエルヴィスマイクを用います。ストリングス、ギター、パーカッションが穏やかな伴奏を展開する中、抑えた歌声をじっくりと聴かせました。

曲のラスト、

卵を透かしてみる 命の宿りを
命の宿りを

と曲名を二回繰り返すパートではスクリーン演出に変化が訪れます。ここまで清冷な青が支配していた霧の隙間から太陽が覗くようになり、輝かしさがもたらされました。

13. サーチライト

曲が始まると、照明がパッと光り出し、ステージがオレンジ色に明るくなります。こちらへ向かってくるように放出される眩しいまでの光は、色合いこそ違えど、前曲のラストの続きを見ているような感覚がありました。

玉置さんもこうした温度感にピッタリ合わせるように、暖かみのある歌声を聴かせていきます。序盤の軽快なギターのリズムに合わせて歌う深みのある低音、サビの華やかなストリングスに乗せる裏声、どれを切り取ってもすべてを包み込むような慈愛に満ちていました。

ラストサビでは玉置さんがそれをジェスチャーでも表現し、

サーチライトはそうなんだ
君なんだ 君なんだ

のパートで右手を大きく伸ばし、客席に向けて差し出しました。この会場は4階席まである、上方向に高い造りです。玉置さんはまず上層階へ手を伸ばし、左右にスライドさせながら徐々に下げていく軌道を辿って、客席の隅々までをなぞっていきました。この2日間はこのジェスチャーが普段以上に丁寧なものに映りました。

14. 熱視線

ロックナンバーが流れ出すと、会場のボルテージが一気に上がっていきます。1日目の3階席の観客はほとんどが座ったままでしたが、2日目の1階席の観客は総立ちになりました。

この曲では2日間で玉置さんの使用するギターが変わりました。1日目はこれまでと同様にFENDERのマイケル、2日目はF.C.G.Rのシロが抜擢されました。

1日目、シロは終始ステージのギタースタンドに置かれていましたが、2日目はスタンドからその姿が消えており、スタッフが玉置さんに手渡す形での登場となりました。

この曲ではリズム隊の演奏が光ります。今回がラストの参加となった千ヶ崎さんのベースと、濵﨑さんのドラムが、一歩一歩大地を踏みしめるように確かなビートを刻んでいきました。玉置さんもこのリズムに合わせてジェスチャーを交えながら快活に歌い上げ、観客を沸かせました。

曲の終わりにはフィニッシュの合図をサポートメンバーに託す玉置さん。誰を指名するか熟考する間、エンディングの演奏は長く引き延ばされました。1日目は中北さんが赤いドラムスティックを上から勢いよく振り下ろし、2日目は武嶋さんがテナーサックスを振って応え、曲がフィナーレを迎えました。

特に武嶋さんはこの直後にガッツポーズも見せていました。普段は演奏も佇まいもクールにキメる武嶋さんの、熱い一面を垣間見た瞬間でした。

メンバー紹介

ここでメンバー紹介が行われます。玉置さんがステージ上手のメンバーから順に、担当楽器と名前を呼び上げていきました。

パーカッション:中北裕子
ドラムス:濵﨑大地
ギター:秋山浩徳
ベースギター:千ヶ崎学
サックス:武嶋聡
1stバイオリン:吉田宇宙
2ndバイオリン:名倉主
ヴィオラ:大辻ひろの
チェロ:稲本有彩
サウンドプロデュース&アレンジ、キーボード:トオミヨウ

各メンバーの紹介後に、バスドラムの音を加えるのが濵﨑さん流です。2日間ともに、観客の拍手に合わせて重みのある音が鳴らされました。

秋山さんの紹介時には玉置さんと秋山さんがギターを振るアクションで応え合います。1日目は二回、2日目は三回、この演出が行われました。ここでも濵﨑さんがドラムの音を入れ、見事に演出を彩りました。

15. JUNK LAND

曲が始まるやいなや、さっそく玉置さんが見せ場を作ったのが、

どっち行く どっち行こう

のところです。フレーズ間に吐息を交えながら、じっくりと歌い上げました。

本曲もベースとドラムの骨太な演奏が唸るように轟きます。この2日間は特にそのビートが強く刻まれ、聴いているこちらの胸にガンガン迫ってくる感覚がありました。

曲の中盤、

待ってる人のその前で
泣いてる人のその前で

からは吉田さんと名倉さんのバイオリンコンビが躍動します。頭を激しく振りながら演奏する、ヘッドバンギングです。二人の頭の動きがピッタリと揃っており、その迫力に圧倒されました。

2番では一瞬のブレイクを挟んで玉置さんの姿が浮かび上がる、

破れちまった旗でも高く掲げ!

のところで、照明が落ちる前に名倉さんが素早く反応しました。演出よりも先に手に持った弓を「高く掲げ」る姿は、2日間ともにフライング気味で、思わず笑ってしまいました。

曲のクライマックスは観客の合唱です。歌われたのは、

ガラクタだけど 心を込めて
緑の丘で 二人で暮らそう

のパート。玉置さんが両手を広げて指揮を取り、唱和が場内に満ちていきました。

これに反応したのは聴衆だけではありません。2日目、2ndバイオリンの名倉さんがこのパートから立ち上がって演奏しました。一方、隣に位置する1stバイオリンの吉田さんは座ったままの演奏でした。

一般的に上下関係が厳しいとされる音楽業界。ましてやクラシック音楽の文脈も汲む弦カルテットであれば、なおさらだと思います。そうした中で、このパートではリーダーに先んじて堂々と自己表現ができる点に、チームとしての風通しの良さが伺えました。現代風に表現するなら、「心理的安全性」の高さの表れと言えるでしょう。

第一部の「愛してんじゃない」で見せた、濵﨑さんが荒々しくドラムスティックを放り投げる姿。「熱視線」での武嶋さんのガッツポーズ。そして今回の名倉さんのスタンディング。バンドメンバーの熱量が次々と伝染し、爆発していく様子は、客席から見ていて胸が熱くなるほど感動的でした。

16. 田園

前奏が始まった途端、弦カルテットのメンバーが一斉に立ち上がります。タイミングのピッタリ合った起立に、ここでもチームワークの高さを感じずにはいられませんでした。

本曲ではスクリーンに赤と黄色が混じったライトが眩しく映し出されます。ここでもステージにいる奏者の影が下側に映り込み、臨場感あふれる光景が目の前に広がりました。

サビで玉置さんが

愛はここにある 堺さかいにある

と歌うと、場内のボルテージがまた一段と引き上げられました。

そのままなだれ込むように続く間奏は観客の合唱になります。玉置さんは1日目は上手側、2日目は下手側に移動し、両手を振って指揮を取りました。

最後まで大盛況のまま、曲はエンディングを迎えます。曲を締めくくる合図は、1日目は玉置さん、2日目はトオミさんが担当しました。玉置さんはギターを肩から手に持ち替えるポーズで、トオミさんは大きく手を振り上げてから下ろす動作で、それぞれ幕引きを演出してみせました。

17. ファンファーレ

武嶋さんのフルートがイントロを奏でます。その澄んだ旋律に、客席からは拍手が起こりました。

この前奏中に、玉置さんはギターを交換します。ステージ中央で仁王立ちしながら、前曲で使ったギターを左手で差し出し、スタッフが持ってきたフルアコを受け取りました。

曲がアップテンポに転じると、ステージの雰囲気も、客席の熱気も高まっていきます。場内が明るくなり、ステージ上では激しい演奏が、客席では勢いのある手拍子と結ゆいくんのスイングが展開されました。中には結くんの胴体がぐにゃりと曲がるほど強く振る観客もおり、とにかく大いに盛り上がりました。

玉置さんはタフなバンドの演奏に負けじと、パワフルな歌声を張り上げます。あれだけボリューミーな演奏音がバックで鳴っているにもかかわらず、ボーカルの存在感が最前線で際立つのは、さすがのパフォーマンスでした。

後奏では玉置さんがステージをワイドに動き回ります。まずは上手の端まで進み、目の前の観客に手を上げて応えました。続けて下手の端にも歩いていき、同じように手を上げました。

玉置さんがステージ中央へ堂々と戻っていきます。歩きながら、エンディングの合図を2日間ともに吉田さんへ託しました。吉田さんが思い切り後屈した姿勢から最後の一音を奏で、圧巻のツアータイトル曲がフィナーレを迎えました。

曲後は故郷楽団のメンバーが起立し、客席からは大きな拍手が巻き起こりました。しばらくすると、スタッフが青のBUSCARINOを玉置さんに渡し、次曲への準備が整いました。

18. メロディー

前曲までの熱狂が嘘だったかのように、静まり切った場内。玉置さんはマイクの前に移動し、心を落ち着かせるように精神統一しました。そして張り詰めた空気の中、

あんなにも好きだった…

と、第一声を歌い始めました。

この2日間は観客のムード作りが格別でした。玉置さんが歌うフォームに入っても拍手や声援を送ることはなく、ただひたすらその歌い出しに注目していました。そんな静寂の中で突如として始まる玉置さんの一言目には、普段以上の重厚感が宿っていました。

その後は玉置さんがじっくりと歌い上げ、聴かせるパフォーマンスを展開していきます。この2日間は玉置さんの気持ちのこもった歌声が強く記憶に刻まれました。サビの、

メ〜ロディ〜
泣きながら〜

ではふわっと力を抜きながら音程を上げる歌い方も披露しました。

曲のラストにも、目に焼き付くような歌い姿がありました。それが

あの歌は心から聞こえてるよ

のところです。完全な無伴奏になり、ライトも玉置さんの姿のみを照らします。ここで玉置さんは少しマイクスタンドから離れ、右手でマイクを、左手でギターのフィンガーボードを強く握りしめながら、ラストフレーズを歌い上げました。その姿は、客席から見ているこちらも肩に力が入るほど勇ましいものでした。

曲後は玉置さんがギターをスタンドに立てかけ、故郷楽団のメンバーとともにステージ前方に整列します。並び順は2日間ともに以下の通りでした。

(下手から)
Vc.稲本さん
Va.大辻さん
Vn.名倉さん
Vn.吉田さん
Key.トオミさん
Vo.玉置さん
Sax.Fl.武嶋さん
Ba.千ヶ崎さん
Gt.秋山さん
Perc.中北さん
Dr.濵﨑さん

メンバー全員で客席に向けて礼をしたのち、玉置さんが一言放ちます。

玉置さん
玉置さん

みなさん、ありがとう!

この呼びかけは両日ともにあり、観客を沸かせました。

その後、サポートメンバーが退場していきます。玉置さんは先頭に立って下手端まで移動し、メンバーを見送りました。特に2日目、玉置さんはこの日が最後の参加となった千ヶ崎さん・濵﨑さんの二人と、力強くハグを交わしました。

全員がステージから捌けると、玉置さんも退場していきます。この退場シーンには2日間で変化が出ました。1日目はこれまでと同様に下手へ退場したのに対して、2日目は上手へと歩いていきました。

無人になったステージに向けて、観客からは惜しみない拍手が続きました。しばらくすると、スタッフが一人ステージに現れ、BUSCARINOを手に引き上げていきました。

その後の演出も2日間で異なりました。1日目は突如として照明が落ち、ステージ中央のマイクスタンドをピンライトが照らす演出が始まったところで、Martin D-45S DENENモデルのギターをかけた玉置さんが下手から再登場しました。一方、2日目はステージが明るいまま、玉置さんが上手から姿を現しました。

※リンク先と写真のギターは、本ギターのモチーフとなったモデルです。

両日ともに、玉置さんは歩きながらステッカーをギターのボディーに貼り付け、剥がした台紙を捨てると、それがステージにヒラヒラと舞いました。足早にスタンドの前に立つと、ギターを弾きながら自由なフェイクを織り交ぜ、静けさの中に独特な世界観を作り出していきます。ここから、玉置さんの一人舞台が幕を開けました。

5. アンコールの様子

19. カリント工場の煙突の上に

そして歌い出されたのは、

カリント工場の煙突の上に

の一節です。この2日間は玉置さんの弾くギターの音が非常にボリューミーでした。リズミカルな演奏に、1日目は客席からまばらな手拍子が起こりました。一方、2日目は手拍子が起こらず、観客は玉置さんの一挙手一投足に食い入るように、そのパフォーマンスを見守りました。

1番の中盤、

白い紙にクレヨンで描いてた
零戦や潜水艦の絵も

からは玉置さんがピックを使って弦を弾くようになります。マイクスタンドに刺してあったピックを素早く手に取り、演奏を続けました。ここからはギターの音がさらに大きく迫ってきました。

その後は指弾きとピック弾きが交互に繰り返されます。特に2日目は毎回、

空よ僕を忘れないでくれ

のパートでピックを放り投げ、指弾きに切り替えていました。

2番の、

僕が今でも泳げないわけは
川で溺れたあいつのせいさ

のパートでは玉置さんがギターのボディーを叩きながら歌います。ここでは演奏も歌唱もトーンダウンしました。

しかし、その緊迫した空気もすぐに打ち破られ、

路地裏で泣いてたあの娘が捨てた
赤い口紅のついてた煙草

のパートからは玉置さんが再びピックを手に取り、ギターを強く弾きながら歌いました。続く

さびれた商店街のアーケード
破れた金網越しのネオン

では伸びやかに叫び、熱のこもった姿を見せました。

2番終了後の間奏では玉置さんがギターをかき鳴らします。どこか若い頃を彷彿とさせるエネルギッシュな演奏シーンを見せながら、Cメロの

市営住宅の中の広場で
リレーをしたんだみんなで

へと向かっていきました。

そして曲はクライマックスに突入し、

空よ 僕を忘れないで 思い出してくれ
大空よ 僕をあの場所へ 連れていってくれ

と、玉置さんがありったけの想いを込めて叫びます。これまでの公演のような完全なアカペラではなく、ギターを弾きながらの歌唱でした。それでも声量は衰えず、凄みを纏った歌声が自席まで押し寄せてきました。特に2日目はこのパートで声を枯らしながら歌い上げました。玉置さんの気持ちが全面に押し出された、魂のシャウトです。ステージの中心にはとてつもなく高いエネルギーが渦巻いていました。

一転して最後は曲の冒頭と同じ

カリント工場の煙突の上に

のフレーズを、じっくりと噛み締めながら歌い上げて締めくくりました。

曲後は玉置さんが空になったギタースタンドを手に、ステージの前まで移動します。そしてギターをスタンドに置き、ステッカーにポンポンと労わるように触れました。その後、1日目は下手へ、2日目は上手へと玉置さんは退場していきました。

以降も鳴り止まない客席からの拍手。2日間ともに、たっぷりと間を置いてから館内アナウンスが流れ、終演を迎えました。

以下、本公演のセットリストです。

6. セットリスト

玉置浩二 with 故郷楽団
Concert Tour 2026
ファンファーレ!!
10月24日・25日
フェニーチェ堺 大ホール
セットリスト

【一部】
1. ファンファーレ(Instrumental)
2. あこがれ(Instrumental)
3. 希望の光
4. 海路
5. ムダな汗(Instrumental)〜R-『★』指定
6. 愛してんじゃない
7. ショコラ
8. MR.LONELY
9. やせっぽちの星
【二部】
10. 希望の光(Instrumental)
11. 花束じゃなくキミといたい
12. 命の宿り
13. サーチライト
14. 熱視線
〜メンバー紹介〜
15. JUNK LAND
16. 田園
17. ファンファーレ
18. メロディー
【アンコール】
19. カリント工場の煙突の上に

7. 公演後の様子

公演後の会場の様子です。

本編後のアンコールで、玉置さんが「カリント工場の煙突の上に」を弾き語りで披露する流れは、すっかり定番となりました。ギター一本であれほどの見せ場を作り上げるのは、さすがの一言です。抑えた歌声とパワフルな歌声、指弾きとピック弾きが繰り返されるギターの音、そしてボディーを叩く勇ましいリズム音。一つひとつの音に奥行きがあり、そのすべてのパフォーマンスに揺るぎないクオリティーが貫かれていました。

メンバーそれぞれの熱い想いがステージ上で次々と伝染していった、密度の濃い2日間の堺公演となりました。終演後には、玉置さんを囲んで故郷楽団のメンバーで撮影した記念写真がSNSにアップされています。ここでは、この堺公演が本ツアー最後の参加となった千ヶ崎さんのXへの投稿を引用します。

本ツアーは昨日までに神戸で2日間の公演が行われ、ついに残すところは11月4日・5日の日本武道館ファイナル2日間のみとなりました。この2日間は弦カルテットがダブルになり、ホーンもツイン体制となります。総勢15名のバンドメンバーが参加する、スペシャルな公演です。ツアーの最終章を、しっかりと目に焼き付けたいと思います。

こばかず

コメント