玉置浩二 ODE TO JOY公演(4/16)@大阪城ホールの感想とセットリスト

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先日の4月16日、billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025 “ODE TO JOY”@大阪城ホール公演に参加しました。

指揮:大友直人
管弦楽:日本センチュリー交響楽団

※本投稿では、公演のセットリストや演出を記載します。本ツアーは15都市26公演の規模で行われます。初日を迎えていない方や、ネタバレに抵抗のある方はご注意ください。

1. 公演前の様子

公演前の会場の様子です。

ホールに面した川沿いの歩道は長い桜並木になっており、ところどころで鮮やかな桜が咲いていました。公演があと1週間早ければ、満開の桜がホールを彩っていたことでしょう。さらに会場へ近づくと、館内外には大阪城ホール公演および日本武道館公演限定となる、開眼ポスターも貼り出されていました。

2. 観客席の情報

この日の座席は、アリーナ席の西ブロック前方でした。その入場ゲートに、本公演の客席案内図が掲示されていました。

この図はあくまで、アリーナ席のみの配置になります。本会場は、ステージと同じ高さに設置されたこのアリーナ席の他に、もう1階層上のスタンド席がある2階建ての設計になっていました。大阪城ホールの公式ホームページを参照すると、ステージパターンAが最も近い構図になります。ただし、この図式と異なるのは、スタンド席は360°全ての座席が開放されていた点です。したがって、ステージの背面にも客席があり、舞台をぐるりと1周囲むように観客席が設けられました。以上の座席配置や、その他の席種としてスタンド席の後方に立ち見席が販売されていたことも考慮すると、収容人数は約12,000〜15,000人程度であったと推測しています。

3. 公演の様子・各曲の感想

18時00分、定刻通りに伝説的なコンサートの幕が上がりました。本ツアーではこの日限りの出演となった、日本センチュリー交響楽団のメンバーが続々と入場してきます。舞台袖はステージ両端の最後方であるスタンド席側の下層に設けられていました。そこからあまり間を空けることなく、女性バイオリニストのコンサートミストレスが下手側から1人で入場。ステージ上方から白いライトが当たり、その歩みを強調していました。他のメンバーの入場から間合いがなくステージに現れたためか、客席からの拍手はまばらでした。

その後、オーケストラによる音出しが行われ、その最終盤に会場が暗転。再び音が鳴り止んだステージに、マエストロが現れるのを待ちます。しばらく経ったのち、本公演を統率する大友さんが同じく下手側の袖から登場。ここから、ステージの両サイドに両面でセットされた四面のプロジェクタースクリーンが作動し、舞台上の様子が投影されて大友さんの登場シーンが映し出されました。舞台裏の位置関係から、メインキャストの入場動線が一般的なコンサートホールとやや異なりました。通常は袖からまっすぐ歩き、1stバイオリンの横を通過してステージ中央に辿り着きます。しかしながら、本公演ではステージ後方に舞台袖が設けられているため、打楽器隊やピアノ・ハープの横を通り抜けてからカーブを曲がり、ようやく1stバイオリンに差し掛かってステージ中央に到着するといったルートでした。そのため、普段の公演よりも入退場に時間を要するのが特徴でした。もっとも、この日の座席は西ブロック(下手側)前方であったため、主役の入退場をしっかりと観察することができました。

大友さんがステージのセンターまで来ると、コンミスおよびトップサイド両名と握手。そこから客席を向き、美しい所作で一礼をしました。その後、指揮台に登ってコンサートが始まります。

1. ベートーヴェン 交響曲第9番 第4楽章 「歓喜の歌」

大友さんがステージ上手側に位置する、コントラバスとチェロの低弦隊に身体を向けて指揮をスタート。渋い低音が主旋律を演奏し、ツアータイトルにもなったベートーヴェン作曲の「歓喜の歌」で管弦楽が始まります。モニターも演奏の様子を映し出し、初めはコントラバスの弦がアップで投影されました。

次節からはヴィオラとファゴットが演奏に追加され、緩やかに音域が上がっていきます。ここでもスクリーンが両楽器を映写しました。本パートの最終盤には、ステージ下手側を占めるバイオリン奏者が一斉に楽器を肩にかけてスタンバイ。演奏音がさらに高まる兆しを聴衆に感じさせました。その後はバイオリンが主旋律を演奏し、これまでの主役を担った低弦楽器はベース音を刻んで音の土台を支えました。ここからは大友さんの指揮が左右にワイドで滑らかになり、見事にストリングスの音がひとつにまとまりました。

最後は大友さんの上下に強く弾む指揮から、金管楽器と打楽器が入ってメインメロディーを演奏。冒頭の渋い低音から徐々に音域が上がる展開を経て、最後はゴージャスな演奏が広がりました。本曲の終了時には、大友さんが激しい指揮で演奏音を完全に止め切りました。

本曲のリンクを以下に貼ります。有名なオーケストラ演奏曲のため同曲の音源はいくつもありますが、スピード感や各楽器演奏の響きが本公演とよく似ていると思いました。

2. 歓喜の歌(玉置浩二)

前曲の爽快なフィナーレからわずかな間を置いて、大友さんがそっと左手を添える指揮でホルンの長音が鳴り、玉置さん作曲の「歓喜の歌」が始まります。この曲は、序盤でカメラワークに不可解な点がありました。2023年に行われたNavigatoria公演(6/4)@那覇文化芸術劇場なはーとの動画を参照すると、0:47でフルートの首席奏者が主旋律を演奏するところで、演奏機会のない2nd奏者を長時間アップ。客席から見てやや困惑したシーンでした。しかしながら、すぐに続くオーボエのソロパートからはモニタリングも修正され、しっかりと演奏者がスクリーンに映し出されました。

その後は各楽器の趣きあるアンサンブルを経て、ラストは切れ味の鋭いオーケストラ演奏で終了へ。ストリングスの弓が何度も往復する弾奏、ブラスが輝かしく高鳴る奏楽、ティンパニが重量感のある打楽を見せ、コンサートの始まりを告げる序曲が完結しました。

そこから、大友さんが舞台袖に手を上げて拍手を続ける合図により、玉置さんが威風堂々とステージに登場。私の目の前をゆっくりと玉置さんが通過しました。舞台中央まで足を運ぶと、大友さんとガッチリ握手を交わしたのちに客席と対面。ここで観客からの拍手が格段と大きくなりました。やがて玉置さんがテーブルに置かれたマイクを手にするのと同時に場内が暗転し、本編が始まります。

3. GOLD

曲前の静まり切ったステージ、楽団から何かをぶつけたような不測の音が発生しました。ここでモニターを見ると、大友さんを正面から撮影した映像が映し出されていました。やや笑みを浮かべながら、左手を前に出して仕切り直しの合図を送ると、しばらくして前奏が始まります。

この曲は、改めて玉置さんと大友さんのアイコンタクトが豊富だと思いました。各パートの入りは必ず目を合わせ、念入りに歌の開始を合わせる両者の姿がありました。特にこの日はステージを斜め前から見届ける座席であったため、玉置さんの背中と大友さんがこちらを向いた格好をよく確認できました。

4/5・6@NHKホール公演で、2日間に変化が出た照明演出に関しては、この日は元のライティングに戻っていました。曲終盤の、

黄金色に輝く 天使に導かれて

以降はライトの色がオレンジから黄色に変化し、歌詞と調和した表現がなされました。後奏では、暗い紫がベースの照明下に、星をモチーフにしたような粒感のある黄色い模様が一体に広がる演出。幻想的な雰囲気で1曲目が終了しました。

4. ロマン

前回から地味に注目していた、

(1番)
せめて夜空が まだ届かぬ夢
追い続けて 目覚めないうち

(2番)
いつか宇宙の果て 命消えても
小さな灯に きっとなれるから

のところ。やはり1番の歌い方も繊細さが増しているように感じました。この日はモニターがあったため、玉置さんの歌っている姿をよく観察すると、目をつぶって歯を食いしばり、口角を上げて歌う感傷的な表情が印象的でした。

ラストサビは伸びやかで強い歌声に変わっていく展開で、1曲の中に多様な歌い方を見ました。最後は、オーケストラによるアウトロが鳴り止むポイントで、大友さんが右手をゆっくり握る指揮に合わせて、玉置さんもクイっと身体を入れる動作をしていました。

5. SACRED LOVE

大友さんが右手を3回そっと添える指揮に従って「祈りの鐘」が3回鳴る曲前のスタート。ここでも玉置さんの様子がモニターに映り、その姿を確認すると左手を胸に当ててその音を聴いていました。

その後、徐々に大きくなるストリングスの副旋律をベースに、ハープが主旋律を演奏して歌唱パートが始まります。この曲は、玉置さんが一言一言をとても大切にしながら歌い進めていた印象を持ちました。特にそれをよく感じたのが裏声のパートで、きめ細やかな歌唱が記憶に残りました。

曲が中盤から終盤に移る、

暗い夜明けでも
凍えそうな真夏も
心にあるのは

後の間奏では、主旋律を鉄琴が担当。あまり主役になることがない楽器ですが、このシーンはしっかりとスクリーンに映像が映っていました。途中からはストリングスの弾奏に移り変わり、最後はトランペットの音が鳴り響く演奏で間奏が終了。モニターもこの場面を映し出し、玉置さんの歌唱に入るポイントを高らかに告げました。この流れに乗るように、ラストサビではパワフルな歌声が響きました。特に、

暗い夜明けでも
凍えそうな真夏も
心にあるのは

で、

凍えそうな〜ぁ〜⤴︎

の歌声が力強く、1段階音程を上げていくアレンジがありました。今年は1番ではメロディーを上げずに歌い、ラストでは伸び伸びと上げていく傾向があるように思います。

6. MR.LONELY〜サーチライト(メドレー)

メドレー1曲目の「MR.LONELY」では、アウトロで最も特徴的なシーンを目にしました。メロディーに合わせて玉置さんが

Oh〜

と裏声で歌う部分です。この箇所が前奏のような連続的な歌声ではなく、ところどころにファルセットを当てていくような歌い方でした。モニターで玉置さんの姿を確認すると、歌唱パートを忘れたようには見受けられず、オーケストラの演奏音に聴き浸りながら、気持ちよくただ自然に発声しているように感じました。とても貴重なアレンジを見ることができたと思います。

2曲目の「サーチライト」では、クライマックスに向かっていく

サーチライトはそうなんだ
君なんだ 君なんだ

で、玉置さんのインパクトあるジェスチャーがありました。普段と同様に観客席に向けて手を伸ばし、上手→正面→下手の順に差し伸べていくと、そのまま後ろに回転してステージ背面の客席にまで手を向けました。ステージ上をぐるりと1周する動きで、360°を聴衆で埋め尽くした大阪城ホール公演ならではのアレンジでした。

7. Friend

オーケストラの前奏中、玉置さんの印象的なポーズがモニターに映し出されました。管楽器の演奏で始まり、途中からチェロの重低音がその音を迎えにいくところで、奏者に対するカメラワークの変化を見ていましたが、ここでスクリーンに映ったのはチェリストではなく玉置さんでした。演奏を聴いてやや下を向きながら、右手を軽く握って胸をトントンと叩く仕草。第一部の最後に気合を入れ直した様子を確認しました。

歌唱パートが始まる、

さよならだけ 言えないまま
君の影の中に 今涙が落ちてゆく

からはピアノとの共演になり、ここでも興味深いモニタリングを目にしました。玉置さんとピアニストの両者を透明でスクリーンに映し、ピアノをバックに玉置さんが前面に投影される演出でした。視覚的にも、ピアノの伴奏に合わせて玉置さんが歌う、といった本曲の特徴がすぐに分かる素晴らしい表現だと思いました。

サビでは、玉置さんの豪快で伸びのあるロングトーンが見事でした。各パートの1回目のトーンは一切ビブラートを使わないストレートな歌声で、2回目のトーンはやや抑え気味にビブラートをかけた歌声、本曲ラストのトーンはマイクを少しずつ身体から離していく歌い方でした。最後はそれでもなお力強いトーンが響き、第一部のラストを飾りました。

オーケストラの後奏を区切りの良いセクションまで聴くと、玉置さんが退場していきます。入場時と同様、ゆっくりと余裕のある足取りでステージを後にしました。舞台袖までの距離が長いため、この日はアウトロをほぼステージを歩きながら聴くことになりました。

後奏の結びは、大友さんが目をつぶりながら手をそっと握る指揮で終了。モニターにもその様子が身体の正面から映写され、最後の最後の音まで聴き浸るような恍惚の表情で第一部を締めくくりました。

8. 新日本紀行(冨田勲)

20分の休憩後、コンサートが再開されます。左右の袖から楽団が次々と入場し、チューニングが行われたのちに大友さんが下手から登場。ここでモニター映像が場内の様子に切り替わり、大友さんの歩き姿を映し出しました。

ホルンのファンファーレで第二部の管弦楽が開始。モニターにも綺麗な金色の楽器が映る、豪華な始まりになりました。続いて、ストリングスが指弾きのピチカート奏法および弓弾きを披露して、和を感じる旋律を奏でました。ステージの後方では拍子木が叩かれてリズムを取り、ピアノも軽快な演奏で見事なハーモニーが生まれて前半を彩りました。

中盤からは、フルート奏者が小楽器のピッコロで主旋律を演奏して、尺八にも似たような高音域の演奏が広がり、お祭りのような雰囲気ものぞく展開になりました。最後は鈴やハープの音も聴こえてフィナーレ。昨年の万博公演で実演された「管弦楽のためのラプソディ」に似た和風テイストで魅力的なサウンドが特別公演を飾りました。

その後、大友さんが袖に手を上げ、拍手をする動作で玉置さんが再登場します。ここでもゆっくりと歩く玉置さん。姿勢の良い歩き姿に全身黒の衣装が相まって、目の前で圧倒的な威厳を感じました。ステージ中央まで移動し、再び観客からの歓声を受け止めると、第二部の本編が始まります。

9. いつもどこかで

曲の中盤にあたる、

暗闇に迷う時は
僕の愛を感じるように

後の間奏をゴージャスなブラス隊が担当。トロンボーン・ホルン・トランペットの順でスクリーンに奏者が映り、豪華な合奏で主旋律を演奏しました。その後に玉置さんの歌唱が再開してからも、引き続き金管楽器がオブリガートを演奏。ところどころでトランペットの吹奏シーンがモニターに映り、玉置さんの歌声を飾る助奏が入りました。

曲のクライマックスである、

僕が君を〜〜〜〜〜

の歌声がこれまでよりも力強く、そして長く感じました。また、膝下までマイクを下げて歌い、ノーマイクにも見えるようなパフォーマンスがありました。この部分は大友さんとのコンビネーションも素晴らしかったです。玉置さんのトーンがフェイクに転じるポイントで、大友さんが左手を振り回す指揮で楽団の演奏を圧する💫と、その動きに連動して右手を前に出し🖐️、ほんのしばらくの間音を完全に制圧。そこから玉置さんの

包んで…いる…

の歌声が入るタイミングで指揮を再開して、静かな演奏が開始。今度は微弱なオーケストラ演奏が終わると、玉置さんによる最後の一言、

よ…

の歌声が入る移り変わりでした。玉置さんの素晴らしいロングトーンだけに留まらない、最高の連携を見ることができました。

10. 行かないで

真っ暗なステージ、玉置さんを白く照らす演出で歌唱パートがスタートしました。序盤は前述した「Friend」と同様に、ピアノの伴奏に合わせて歌う形です。あの感動的なモニター演出が心に残っていたので、注目して見ていましたが、ここでは玉置さんをソロでアップするカメラワークでした。

2番は、玉置さんの歌声とチェロの重低音が渋く交差する共演で始まります。ここでは、両者の姿を交互に映すモニタリングでした。本公演はその時々でわずかな変化を持たせた、バラエティ豊富な映像演出が見事でした。近年はなかなか前方の席に恵まれない中、ツアーの半ばにステージ上の様子をしっかりと確認できて良かったです。

11. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)

「ワインレッドの心」から「じれったい」に移る繋ぎの間奏で、玉置さんがステージの背面を向いてフェイクを入れていました。ここまで、後ろを見ることはあっても歌うことはなかったため、初のシーンでした。その後、前奏が始まると、今度は正面を向いてマイクを持った右手を前に出すポーズ👊🤜を見せ、これまでの雰囲気とは違ったノリのあるムードで曲が進行しました。歌唱パートが始まってからも、玉置さんはたまに後ろを向いて歌い、通常の公演では見ることのないような光景が広がりました。

「悲しみにさよなら」では、1番サビ前の

揺れる・・・心を〜ぉ〜⤴︎
止められない

が、最近よく見せる溜めてから上げるアレンジでした。左手を胸に当てながら歌う玉置さんの歌い姿も、しっかりとモニターに映写されていました。

1番サビのアレンジは、この日も

愛を世界の平和のために

で、本公演では初めて曲中に客席から拍手が起こりました。以降は、玉置さんの歌声もジェスチャーも感動的なラストが繰り広げられました。

悲しみにさよなら
ほゝえんでさよなら
ひとりじゃないさ
(中略)
飾らない言葉で
無くせない心で
ひとつになれる

では手を前に差し伸べて、おおらかに会場を包み込みました。最後はマイクを身体から遠ざけて、

泣かないでひとりで
ほゝえんで見つめて
あなたのそばにいるから

の歌唱。この部分、私が前回参加した4/5・6@NHKホール公演ではあまりマイクを離していなかった印象があったため、変化を感じました。その後は完全にオフマイクで

悲しみに〜さよなら〜

と歌ってからオーケストラの後奏が開始。締めは大友さんが半身で右手をゆっくり握る指揮に、玉置さんが両手を大きく広げるポーズで応えて曲が終了しました。その後、安全地帯メドレーの終了時には定番となったように両者が握手を交わしました。

12. JUNK LAND

かなりのスピード感で曲がスタート。前奏時には、ハープとピアノによる速弾きの様子がモニターに映っていました。玉置さんの歌唱パートが始まってからも、依然として緊張感が走る中を曲が進行。大友さん特有の、疾走感あふれるリズム感が生成されていました。ただ、ステージ上の演者にはまだまだ余裕があったようにも見えました。

本曲の中で特に素晴らしいと感じたのは、

待ってる人のその前で〜

以降のパートです。ストリングスのカット奏法がテンポを生み出し、裏のリズムをフルートが取るところ。ここの演奏が全く狂いなく完璧で、超高速なスピードを自在に操るハイレベルな演奏を見ました。年々スピードが速くなり、新たな挑戦を続けている本曲、これからもどんどんそのパフォーマンスに磨きがかかっていく予感がします。

転調後のラストは一転して緊迫感を抜け、伸びやかで雄大な世界が広がりました。玉置さんのジェスチャーも広大なものになり、

緑の丘でふたりで暮らそう

では、客席に向けて手を伸ばして身体を1回転したのち、今度は反対方向にもう1回転しました。

後奏では、普段以上にテンポ良くフェイクを多用する玉置さん。曲のリズムに自然体で身を任せる姿がありました。ラストは大友さんと正対し、終了のポイントを合わせていきます。大友さんが繰り出す指揮にピッタリ合致して、玉置さんが素早くマイクを引っ込める動作で歌い終わりました。本曲は、最初から最後まで全く音が崩れないパーフェクトなパフォーマンスでした。曲後には玉置さんと大友さんが抱きつく姿があり、客席で感じた思いがステージ上でも共有されていたものだと想像しました。

13. 夏の終りのハーモニー

最後のノーマイク歌唱、玉置さんがアップでモニタリングされました。普段よりものけ反った後屈姿勢のフォームからその歌声が放たれると、このときに映った玉置さんの胸板がたくましく、とてもパワーを感じるものになりました。

歌唱パートの最後を、

忘れずに〜〜〜〜〜

といったロングトーンで締めくくると、その後が極めてドラマチックなひとときになりました。オーケストラによってアウトロが展開される中、観客席からの拍手が鳴り響き、演奏が進んでもその音は一向に止まる気配がなく、いつまでも続いていました。もはや演奏音が聴こえないほどのボリュームと長さで、昨年に万博記念公園で行われたPastorale公演ファイナルも同様の反応であったと、当時の情景がフラッシュバックしてきました。

カメラワークも昨年のものと似ていました。後奏の最中もスクリーンは楽団を映すことなく玉置さんを追い、その表情をずっと映し出しました。背中でオーケストラ演奏を、正面で観客からの拍手を聴き浸り、嬉しそうな様子を何度も浮かべていました。玉置さんとしても拍手が鳴り止まないことは想定外だったのか、表情の変化は多様でした。演奏が終了する際には、両手を握り合わせる玉置さんの姿がありました。自身でも充実感に満ちあふれ、このパフォーマンスを噛み締めているように見えました。

曲後は大友さんが指揮台から降りて客席から見て左手、玉置さんが右手に移動する立ち位置で、しばらく観客からの拍手喝采が続きました。モニターで両者のやり取りを観察すると、

大友さん
大友さん

素晴らしい!

玉置さん
玉置さん

ありがとうございます

(互いに目を見ながら)🤝

というような光景が繰り広げられました。これまで、長きに渡ってシンフォニックコンサートを牽引してきたマエストロとの握手に重みを感じました。

そこから両者が2度ゆっくりと退入場するカーテンコールの演出を経て、大友さんは指揮台に登り、玉置さんは再度舞台袖に戻ってコンサートが再開します。ここで玉置さんは、

玉置さん
玉置さん

(1度舞台の裏に)👈戻ってから
(またステージに)👉戻ってくる

といった合図を見せて長い動線を歩いていきました。

14. 田園

ベートーヴェン作曲の「田園」で始まり、途中から玉置さん作曲の「田園」もメロディーに織り交ぜられる曲の編成で管弦楽がスタート。最後はシンバルやティンパニが豪快に叩かれる音で序奏が終了しました。この日は舞台袖からステージまでの距離が長いため、どのタイミングで玉置さんが現れるのかに注目していました。すると、前演奏が終わる打楽器の演奏中に早くもステージに姿を見せ、ホームポジションへ向けて歩き始めました。しかも、当日はこの打楽器音の連打がいつもよりも長く、ここで多くの歩数を稼いでいました。その後に玉置さんの「田園」の前奏が始まる頃にはすでにカーブを曲がり、1stバイオリンの横を歩いていました。

前奏で観客の多くがその場に立ち上がり、手拍子が巻き起こって進行しました。やがて玉置さんの歌唱パートが始まってからも手拍子のリズムは続きましたが、大友さんも特に静止する様子はなく曲を進めました。サビは合唱になることを想定していましたが、1番は玉置さんが全て歌い上げ、地名を入れたアレンジを

愛はここにある 大阪にある

とシンプルに施しました。

2番に入ってからも手拍子の勢いは衰えず、大盛況で曲で推進されていきました。ここで、珍しく玉置さんが歌詞を間違えるシーンがありました。サビ前の、

そんなに急がないで そんなに焦らないで

のところを、

そんなに急がないで そんなに慌てないで

と歌っていました。原作に聴き慣れているためその場では違和感を覚えましたが、言葉の意味や歌詞の流れをよく考えてみると、そこまで大差はないように思いました。

そこから2番のサビに入ると、今度は観客の合唱になり、玉置さんが両手を上げる合図に合わせて

生きていくんだ それでいいんだ

のパートを大入りの観衆が歌う展開になりました。この流れはラストサビも続き、最後の

生きていくんだ それでいいんだ

も観客の唱和が彩りました。

その後のアウトロはクライマックスのシャウトパフォーマンスへ。思いっきり身体をのけ反らせながら天に向かって放たれるトーンが、大阪の夜に響き渡りました。大友さんの指揮、オーケストラの演奏が終わってからもなおその歌声は伸び、膝をさらに曲げて後屈姿勢の反りが深くなっていました。マイクを下ろしてからもまだその歌声が続いており、壮観なパフォーマンスで代表曲を締めくくりました。

曲後は再び、大友さんと玉置さんがステージに並ぶ配置でしばらく拍手を聴くと、2人が退場していきます。オーケストラのみが残ったステージ、依然として客席からは拍手・歓声が続く中、両者がステージに戻ってきました。そこから大友さんが指揮台に登り、玉置さんがマイクを持つと、さらなる大歓声が起こってコンサートが再開します。

15. メロディー

終始、オレンジ色の照明で曲が進行しました。あまりこの曲にオレンジのイメージはありませんが、前曲までで生まれた会場内の熱気と、充実感漂う空気の中においては、このライティングが見事にマッチしていたように思います。

2番を歌い終えると、間奏の割と早いタイミングで玉置さんがテーブルにマイクを置き、イヤモニを外してノーマイク歌唱の準備が整います。この日は、

メロディー
泣きながら〜

メロディー
泣かないで〜

の両パートで、最近よく見せる

メロ⤴︎〜ディ〜

といった音程を跳ね上げるアレンジがありました。思えば、昨年の万博公演でも2回ともこの歌い方であったと、妙に共通点を探りながら聴いていました。最後は

泣かないで〜〜〜

の力強いトーンから、

あの歌は心から聞こえてるよ

といった深みのある歌声で曲が終了。素晴らしい特別公演のラストを歌い切りました。

曲後は玉置さんがステージの上手端から下手端まで移動して、観客からの声援に応える場面がありました。ここで玉置さんの歩き姿がモニターに映っていましたが、この様子が英雄そのものでした。やがて玉置さんと大友さんが2人でステージを後にすると、再びオーケストラのみが残った舞台上に拍手が送られ、主役の再登場を期待するような音が鳴り続けました。

すると、玉置さんを先頭に大友さんもステージに姿を見せました。大友さんは足早に指揮台に登り、玉置さんは手を使って発声する合図🗣️をしてからマイクを持ち、ダブルアンコールへの気運が一気に高まりました。

16. 田園(ダブルアンコール)

ベートーヴェンの「田園」は省略され、玉置さんの「田園」で前奏がスタート。迫力のある始まりに観客もすぐに手拍子で応え、いきなり大盛況になりました。ダブルアンコールでは本編と異なり、玉置さんが両手を上げる合図に合わせて、前奏の発声パートを観客が歌う展開になりました。そこからAメロに入ると観客の歌声は止み、今度は玉置さんの独唱に切り替わります。

サビでは、玉置さんが両手を広げるジェスチャー、大友さんがこちらを向く指揮に合わせて、

生きていくんだ それでいいんだ

を観客が合唱しました。その後は玉置さんが歌い、ここでのアレンジは

愛はここにある 大阪城ホールにある

でした。本編の「大阪」といった広い範囲から、「大阪城ホール」という限定的な場所にワードを使い分けたチョイスに、見事なセンスを感じました。

その後も、間奏の発声パートと2番およびラストサビの

生きていくんだ それでいいんだ

を観客が合唱するお決まりのパターンで進行。あっという間に後奏へ入り、この日2回目のクライマックスシーンに突入しました。本編に負けないほどのフルパワーでシャウトをする玉置さん。いや、それ以上の長さを維持した歌声は圧巻そのものでした。歌い終わると、マイクを突き出すポーズでこの演出に華を添え、見事に絵になる姿を見せました。

曲後は再度、大友さんと玉置さんが横に並び、客席からの拍手や歓声をしばらく受け止める時間がありました。すると、玉置さんが

玉置さん
玉置さん

ありがとう〜!!!

とノーマイクで叫び、こうした賞賛に応える姿もありました。そこから玉置さんを先頭に大友さんと一緒に退場して、またもやオーケストラのみが残るステージになりました。その後も主役の再登場を期待するような拍手が飛び交いましたが、願いは叶わずに舞台袖からスタッフが現れて、楽団員に撤収するような合図を送りました。最後はコンサートミストレスがその場で一礼をして終演。ここで館内アナウンスも流れました。やがてオーケストラが自身の楽器を持って退場していく際にも客席からの拍手が再燃して、非常に素晴らしいムードで特別公演が完結しました。

以下、楽曲のセットリストです。

4. セットリスト

billboard classics
玉置浩二
LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025
“ODE TO JOY”
4月16日
大阪城ホール
特別追加公演
セットリスト


【一部】
1. ベートーヴェン 交響曲第9番 第4楽章 「歓喜の歌」
2. 歓喜の歌(玉置浩二)
3. GOLD
4. ロマン
5. SACRED LOVE
6. MR.LONELY~サーチライト(メドレー)
7. Friend
【二部】
8. 新日本紀行(冨田勲)
9. いつもどこかで
10. 行かないで
11. ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら(メドレー)
12. JUNK LAND
13. 夏の終りのハーモニー
【アンコール】
14. 田園
15. メロディー
【ダブルアンコール】
16. 田園

5. 公演後の様子

公演後の会場の様子です。

最高級に素晴らしく、そして美しい大阪の夜になりました。ファイナルの日本武道館公演と並んで、今ツアーの「眼玉」となった第1弾に相応しい、極上のクオリティーを有したコンサートでした。

本日と明日は、3年連続の開催となった沖縄公演に参加します。大阪城ホール公演から1週間、この期間はコンサートが行われていないため、前回からの進化や変化を連続的に感じることができそうです。本ツアーもいよいよ折り返し地点に突入、これからのパフォーマンスも目が離せません。

こばかず

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