先日の6月17・18日、billboard classics 玉置浩二 LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025 “ODE TO JOY”@日本武道館公演に参加しました。
指揮:大友直人
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
今回は2公演分をまとめて記載します。また、前後編の2本立てにしました。公演前の様子から第一部の感想を前編、第二部の感想から公演後の様子を後編としています。
公演前の様子から第一部の感想を記した前編はこちらからご覧ください。
4. 第二部の感想・各曲の感想
約25分間の休憩後、第二部が始まります。通常のコンサートよりも離席した人の流れが多いためか、やや長めにインターバルが設けられました。左右の舞台袖から続々とステージに姿を現す東京フィルハーモニー交響楽団のメンバー。全員の準備が整ったのちにチューニングが行われ、その音が鳴り止むと、ここでも明るく場内を照らしていた客電が急激に落ちてコンサート仕様の照明に変移しました。そこからしばらく経ってから、マエストロの大友さんが1人で登場してきます。指揮台に登ると、指揮を構える姿がステージ左右のスクリーンに正面から映り、管弦楽で第二部がスタートします。
8. 『ハンガリー舞曲集 第1集』より第1番(J.ブラームス)
大友さんの力強い指揮で、迫力あるストリングスの演奏が始まります。ここに透明感のあるフルートと、明るく澄んだトライアングルの短音がオブリガートとして入り曲を彩りました。曲中に繰り返し訪れる本パートでは、ファゴットやオーボエなど、主に木管楽器がモニターに映り、ステージ上の様子が多様に投影されました。
途中、メランコリックなムードが蔓延する静かな演奏に落ち着いたのち、最後は冒頭と同じ貫禄あるメロディーに帰着。ここからは大友さんが指揮台を広く使い、前傾姿勢で前のめりになって躍動感あふれる指揮を展開しました。最後はトライアングルが連打される中、ストリングスの激しくシャープな演奏で終了。大友さんが右手を豪快に振り回す指揮でフィナーレを迎えました。同時にストリングス隊の弓が上に舞い、華麗なラストを飾りました。
曲後は大友さんが指揮台から降り、ここでも1stバイオリンの奥深くまで歩いて、拍手をしながら舞台袖の様子を窺います。やがて玉置さんが登場。全身黒の衣装に身を包み、より風格を感じる格好で再びステージに姿を見せました。
9. いつもどこかで
緑が明るく優しい照明で前奏がスタート。その途中に玉置さんがささやくようなフェイクを入れてから歌唱パートに移りました。序盤はバイオリンが弓弾きで伴奏のメロディーを作り、チェロが指弾きでリズムを生む中を進行。第二部も玉置さんの調子は非常に良く、澄み切った綺麗な歌声が聴こえました。
泣いている人のそばで
優しく咲く小さな花になって
からはチェロが弓弾きに変わり、コントラバスが指弾きで演奏に加入。さらに深みを感じる伴奏のもとを玉置さんが歌い進めていきました。次のパート、
暗闇に迷うときは
僕の愛を感じるように
が始まると、ステージ上手側前方を占める低弦隊が一斉に楽譜をめくる姿がありました。こうした演奏以外の様子も、特に2日目はスタンド席からよく観察することができました。
その後の間奏は主役が変わり、金管楽器が主旋律を担当します。ステージ後方に向けた奥行きある大友さんの指揮に応じて、トランペットやトロンボーンの輝かしい演奏が広がりました。本パートは、今年のツアーで全体的に際立ったブラスの音をふんだんに盛り込むサウンドアレンジに象徴するような演奏で、この豪勢な音色は特にツアー10周年を飾るファンファーレのように聴こえました。そこから続くラストサビは玉置さんの力強い歌声が響き、先の間奏でメインメロディーを演奏したトランペットが高音の助奏を担当して玉置さんの歌に乗り、煌びやかにアクセントを付けました。そして、最後の見どころ、
僕が君を〜〜〜〜〜
で強烈な玉置さんのトーンが起こり、マイクを口元から大きく離した大迫力の歌声が響き渡りました。その途中、ストレートな歌声がフェイクに転じるポイントを感じて、大友さんが左手を回して楽団の音を止め、この動きに連動するように右手を前に出してしばらく待ちのサインを送りました。こうした両手で送る指揮と同時並行で、目では玉置さんの様子を確認。2日目はそこからあまり時間を置くことなく始まった、
包んでいる…よ…
の歌声に合わせて指揮を再開して、見事な歌声・指揮・演奏の呼吸で曲を締めくくりました。
10. 行かないで
曲前、真っ暗な空間が場内を支配。その中、ただ1本の黄色いライトがステージ上方からマエストロの譜面台に当たり、大友さんが丁寧に譜面を次曲のものへセットする所作がモニターに映し出されました。演奏の準備が整ったところで映像がハープの弦をアップしたアングルに切り替わり、ゆっくりと弦が弾かれる様子を投影したのちにオーボエの主旋律で前奏が始まります。
玉置さんの歌唱パートが始まると、幻想的なライティングが会場を包み込みました。2本のライトが白く玉置さんに当たり、1本のライトが黄色く大友さんに当たるデザインがこの演出を作り出していきます。玉置さんを照らす2本の白いライトは、うち1本がステージの真上から強く当たり、もう1本は会場正面の最奥部上方からうっすらと当たってその姿を強調しました。大友さんを照らす黄色い1本のライトは、ステージの上から光が照射されて、その姿を目立たせていました。この3本の光線が非常に美しく、素晴らしい芸術作品でした。また、このライティングが続く最中には、玉置さんの歌い姿がところどころでモニターに映し出されました。周りが暗い分、この映像も玉置さんの姿をよく強調するものになりました。
2番に入ると、玉置さんとチェロの共演で始まります。ここからは白く太いライトが1本追加されてチェリストをフォーカスし、合計4本の照明がステージに当たって進行しました。重厚なソロパートに合わせて玉置さんの歌声が入る見事なハーモニーでした。2番のサビでは、玉置さんの機微なマイク位置の調整による音響の変化を見ました。
Ah〜 行かないで 行かないで
どんなときでも 離さないで
Ah〜 行かないで 行かないで
このままで
ここで、マイクを遠ざけながら地声で歌う玉置さん。ややマイクを離しているためボリュームは抑えられつつも、しっかりと歌声が聴こえてくる立体感を感じる音の響きが見事でした。
2番終了後の間奏ではオーボエのソロパートが実演され、ここでも白いライトが奏者を照らしてそのパフォーマンスを際立たせました。それと同時に、辺が黄色く描かれた六角形の集合が、外側からまとまるようにステージ上に集結していき、次なる演出に向けた準備がなされました。その後、玉置さんの歌唱パートが始まったところでこの図形が観客席の上方に向けて発散され、グルグルと回るファンタスティックな世界が広がりました。玉置さんの感動的な歌声も相まって、円形の大ホールで見るこの演出はとにかく壮大なものでした。最後はコンマスによるバイオリンソロが後奏を担当。ここでも演奏者を上から白く照らして、その姿を強調するライティングで曲が終了に向かいました。
11. ワインレッドの心〜じれったい〜悲しみにさよなら(メドレー)
ハープの弦が鋭く一閃されて曲がスタート。紫色の照明で「ワインレッドの心」から安全地帯メドレーが始まります。歌唱パートが始まると、軽快に歌い上げる玉置さんの姿がありました。これまでのバラード曲とは雰囲気が変わり、ロックなテイストを感じる歌唱スタイルでした。1番のサビを終えてラストサビに入ると、ライトが妖艶な紫色から情熱的な赤色に変化。ツアー後半から影を潜めていた照明の移り変わりが千秋楽に復活しました。このパートでは、
あの消えそうに燃えそうな
ワ〜〜インレッドの〜
で放たれる玉置さんのシャウトが強烈でした。上を向いて、雄叫びを上げるように歌う姿は圧巻そのものでした。
繋ぎの間奏が次曲に向けて進行。ここでは、玉置さんがフェイクを入れてこの演奏にアクセントを加えました。最後はますます盛り上がっていく演奏を大友さんが横方向への大胆な指揮で消し去り、「じれったい」の前奏が始まります。以降は紫色がベースの照明下で、黄色や青色、オレンジ色のライトが随所にスポットされて会場を彩りました。これまでの曲は単色の照明演出が多かったですが、本曲はカラフルなライティングが施されました。歌唱パートの序盤は、ホルンをはじめとする金管楽器が勇ましく合いの手を入れる中を玉置さんが歌い進めていきます。ブラスの特徴である重みを感じる演奏で、曲に力感が生まれました。サビ以降は乗りに乗って歌う玉置さん。2日目は、
Baby Baby Baby
心を燃やして 全てを燃やして
もっと もっと知りたい
で手を前に出す独特の動きがありました。

このタイミングでその動作をするんだ
と思うような意外性のあるモーションで、メドレーの2曲目が終了しました。
ホルンが格式のある演奏で「悲しみにさよなら」の前奏がスタート。一気に光が射し込むような雄大さを感じる演出で歌唱パートに向かいます。冒頭は大友さんが玉置さんの方を向いて指揮を広げて、
泣かないでひとりで
ほゝえんで見つめて
あなたのそばにいるから
と始まりのサビが展開されました。序盤はフルートの演奏が鮮やかに弾ける伴奏下で軽快に歌い上げる玉置さん。落ち着いた雰囲気の中にもリズム感をよく感じるパフォーマンスでした。サビ前、
抱きしめる腕の強さでさえなぜか
揺れる心を止められない
では、
揺れる・・・心をぉ〜⤴︎
といった、今では馴染み深くなったアレンジが2日間ともにありました。歌いながら左手を胸に添える玉置さんの姿で、本パートはよく強調されたシーンになりました。続くサビでは、その最後を
愛を世界の平和のために
と歌うと、直後に客席から大きな拍手が起こり、玉置さんがお辞儀をしてこの賞賛に応えました。
その後は、ここでも金管楽器の演奏が鋭く助奏として入るサウンドアレンジで展開。特にそれが目立ったのが、
泣かないでひとりで(※)
その胸にときめく
愛を叶えられたら
のパートで、トランペットの狙いを定めたように研ぎ澄まされたファンファーレが高らかに鳴り響きました。この音を、大友さんが分かりやすく左手を伸ばす指揮で引き出し、そのままの流れで大きく1回転させて消し去りました。こうした一連の指揮動作とそれに応える演奏が見事で、ステージ上の素晴らしい連携を見ました。一転してこれらの伴奏が急激に静まり、場内も暗転して進む、
泣かないでひとりで
ほゝえんで見つめて
あなたのそばにいるから
では、右手に持ったマイクを大きく身体の外側に遠ざけて歌う玉置さん。ノーマイクの雰囲気も覗かせる歌唱法は千秋楽も健在でした。そして、1日目はその後の短編の間奏でハプニングが発生しました。曲が終了したと勘違いしたのか、早くもこのタイミングで大きな拍手が観客席から起こり、なおもパフォーマンスを続けているステージとの温度差が浮き彫りになりました。この音は、再び玉置さんの歌唱が始まるポイントまで続き、まさかの展開で最後の一節を迎えることになりました。しかしながら、次の瞬間、こうした予期せぬ出来事にも動じず、機転を利かせて見事に対応した玉置さんの姿を目にすることになります。歌の入りである、
悲しみに〜
を普段よりもマイク位置を上げて語気を強めに発声する咄嗟のアレンジ。これが功を奏して、拍手を鎮めるのと、観客席までしっかりと歌声を届ける二面の効果が同時に得られて難題が解決されました。今度は客席の拍手が鳴り止んだ様子を確認するや否や、完全にマイクを下げ切って、
さよなら〜
の歌声でメドレー曲が終了しました。曲後には、こうした不意のアクシデントを立派に乗り切った自分を自賛するように、1発叫ぶ玉置さんの姿もありました。客席から見てもこの臨機応変な対処は素晴らしく、圧倒的な経験に裏打ちされた百戦錬磨のテクニックを肌で感じることができました。
12. JUNK LAND
ハープとピアノによる速弾きの様子がモニターに映って曲がスタート。千秋楽も大友さん特有の疾走感あふれるスピードで曲が展開されていきました。1日目は、玉置さんの歌唱パート、
どっち行く?どっち行こうー
あたりで観客席から手拍手が発生。やや懸念していたシチュエーションが現実になってしまいました。こうした状況にいち早く反応する大友さん。身体はオーケストラに向けて指揮を執りながらも、まず左手を後ろに伸ばして振り、拍手を抑えるように指示を出しました。それでもその音は止まらず、今度は右手を同じように客席に向けてようやく手拍子が沈静。これで観客もパフォーマーもステージに集中できる体制が整いました。このように、少々慌ただしい曲の入りになった1日目の一方で、2日目は観客席からの音が一切起こらず、ステージに配慮された素晴らしい雰囲気で曲が進行しました。
本格的に玉置さんの歌が始まってからは、玉置さんが大友さんに急接近してリズム感を確かめながら歌う姿がありました。大友さんもこうした様子を感じ取り、ところどころで玉置さんの方を向いて指揮。特に各パートの初音をしっかりと合わせようとする意識が伝わってくる振る舞いでした。2日目は、サビ前で玉置さんの印象的な歌い方を確認しました。
どんな風が吹いたって 負けるわけない
で、
負けるわけない〜ななない
といったアレンジで、爆速の中でもまだまだ余裕があるような遊び心を見せました。続くパートは一言一言を込めるように歌い、最後の
愛してる人のその前で
では客席に向けて大きく手を伸ばす場面がありました。2日目はその後の短い間奏中に激しく叫び、迫力ある姿を見せて2番に入りました。
2番も一切スピード感が緩まない、緊迫感のある高速なテンポで曲が進みました。それでも全くリズムが崩れることなく、ハイレベルなパフォーマンスが展開されました。1番よりも曲調に変化が出る、
破れちまった旗でも高く掲げ!
のシャウトから、間を置くことなく続く
月と星と太陽とそれとCherry連れて
のメロディーを流暢に繋ぎ、
後輪タイヤがひとつパンクしちゃって
ギザギザ欠けてくハートを合わせて
僕のスピードじゃ何も変えることができない
のフェイクもスムーズに歌い上げました。
転調後のラストは、緊張感のある引き締まった空間から抜け出し、開放的な世界が広がりました。ここまで会場を支配していた黒がベースの照明も、白と緑のライトにガラッと切り替わり、一気に視界が開ける見通しになりました。ここからは、玉置さんの歌声とジェスチャーも非常に伸び伸びとしたパフォーマンスになり、大胆なモデルチェンジがなされました。特に、
ガラクタだけど 心を込めて
緑の丘で2人で暮らそう
では、手を観客席の前方に差し伸べ、1日目はその場で1回転してステージ裏の観客にも手を向けました。
限りなく青い大空
そうJUNK LANDで
でも、客席に向けてまっすぐに手を伸ばす玉置さんの姿があり、連日の快晴を象徴するような晴れやかな動きを見せました。
その後は後奏に移り、玉置さんと大友さんが向き合って曲が終了に向かいます。大友さんが腰を低くして拳を奮わせる指揮に、玉置さんが裏声を対応させて追随しました。最後は大友さんが大きく振りかぶるモーションでダイナミックに指揮が終了。その瞬間、ピッタリと玉置さんの歌声も止まって曲が締めくくられ、激動の1曲が見事に完結しました。直後には客席から大きな拍手が起こり、1日目はこのタイミングでステージ裏の観客が多数その場に立ち上がって賞賛を送り続けました。玉置さんは舞台の後ろにも身体を向けて、しばらくこの絶賛に浸る贅沢なひとときが会場に流れました。そこから場内が暗転してからもなお、拍手の音が収まる気配がなく、玉置さんがマイクに手を伸ばしてようやく会場が落ち着きました。
13. 夏の終りのハーモニー
前奏から早くも、客席の上空に黄色い粒々のライトが散りばめられる演出でスタート。玉置さんの歌唱パートが始まってからはこの星々が消え、真っ青なライティングが場内を照らしました。前曲のアップテンポなリズムとは裏腹に、スローなテンポでバラード曲が進みつつも、これまでのパフォーマンスで醸成された熱気をどこかに感じる充実感ある雰囲気が生まれました。
1日目は、1番のサビ前、
それが僕と君のハーモニー
の
ハ〜〜モニ〜
で強烈にビブラートをかける歌い方が印象に残りました。続くサビでは、最後の
いつまでもずっと忘れずに〜〜〜〜
の歌声が2日間とも非常に長く、間奏に差し掛かってもずっと続くロングトーンがありました。右手で持ったマイクを少しずつ身体の外側に遠ざけながら歌い、声量は抑えられつつも途切れない歌声が続きました。
2番のサビに入ると、前奏と同様に再び黄色い粒子がステージの天井に当たり、歌詞にもある
星屑の間を揺れながら
を模した演出が広がりました。日本武道館の大きな空間に飾られたこのライティングは、とにかく壮大でロマンチックな作品でした。その後のラストサビは、玉置さんがマイクを置いて圧巻のノーマイク歌唱にシフト。大きく胸を張り、全身を共鳴させるように力強い姿で歌い、広い会場の隅々まで玉置さんの肉声が響き渡りました。最後は、
忘れずに〜〜〜〜〜
のロングトーンを心を込めるように両手を握り締めながら歌うと、その最終盤にビブラートへ声質が変わるポイントを見計らって、大友さんの指揮が再開されてオーケストラの演奏がリスタート。特に2日目の大千秋楽は、このタイミングが見事にピッタリ合っていました。玉置さんの歌声が消えると、早くもここで観客席から大きな拍手が起こって温かいムードが会場を包みました。玉置さんは充実感が漂う表情でこの音を聴き、その様子もモニターに映し出されました。その後もオーケストラによる後奏が続きますが、スクリーンは引き続き玉置さんの表情をアップでウォッチ。演奏音と拍手に聴き浸るような姿が投影されました。最後は演奏が止まるタイミングで両手を握り合わせるお馴染みのポーズで曲がフィナーレ。感動的な本編のラストを飾りました。
曲後は場内が明るくなり、カーテンコールの演出に入ります。観客の多くがその場に立ち上がって賞賛の拍手を送る中、玉置さんと大友さんが2回退入場を繰り返しました。主役の退場時にはその歩みをモニターに映し、捌けたタイミングで映像が「ODE TO JOY」のメインビジュアルに切り替わりました。しばらく経ってから2人が入場すると、再びステージの様子に映像がシフトチェンジされて登場シーンを映し出しました。最後は大友さんが指揮台に登り、玉置さんは再度ステージを後にします。この退場時には、

(またステージに)👉戻ってくる
(1度舞台の裏に)👈戻ってから
(管弦楽に向けて)🫱🫱🫱
といったジェスチャーを我々に見せて、また舞台に戻ってくる旨を示唆しました。さらに、入場ゲートを潜る際には、頭上に設置されたスタンド席の観客に向けて手を振る玉置さんの姿も確認しました。その先を見ると、ものすごい大きな動作で手を振り返す観客の波があり、日本武道館公演ならではのサービスを見ました。
14. 田園
指揮を構えた大友さんの姿が正面からモニターに映り、「ベートーヴェン 交響曲第6番 第1楽章 田園〜Pastorale」の管弦楽がスタート。ストリングスの演奏で曲が始まります。以降はオーボエやクラリネットなどの木管楽器が時折ソロパートを見せて、温かみのある演奏が広がりました。その後はベートーヴェン作曲の「田園」と玉置さん作曲の「田園」が代わる代わるミックスされる演奏を経て、玉置さんの作品が優勢になったところで観客席から手拍手が起こりました。ここからはライトが緑色になり、より田園感をイメージさせる照明が場内を彩りました。最後はオーケストラ演奏が盛り上がり、ティンパニの連発で序曲が終了しました。この最終盤には玉置さんが舞台袖から姿を現して、駆け足にステージ中央へ歩いていきます。
本格的に玉置さん作曲の「田園」がスタート。浮き足立つような軽快なリズム感に、観客の多くがその場に立ち上がり、手拍子の音がボリュームアップして盛り上がります。前奏の発声パートは、両日ともに玉置さんが1人で歌い切って歌唱パートに入りました。ここからは手拍子がパッタリと止み、演者のステージが展開されていきます。序盤はフルートのオブリガートがよく目立ち、演奏の様子がモニターに投影される中を玉置さんが軽やかに歌い上げました。曲調に盛り上がりの兆しが見えるBメロを抜けると、いよいよサビに突入。ここも玉置さんが1人で歌い進めて、最後の歌詞アレンジを
愛はここにある 武道館にある
と歌いました。このパフォーマンスに客席から大きな拍手が巻き起こり、その音がスイッチを押したように客電が点灯して、2日目は間奏の発声パートが観客の合唱形式になりました。両手を大きく広げて歌声を引き出す玉置さんに、体勢を反転して客席を向いて指揮を振る大友さん。14,000人による大合唱が日本武道館にこだましました。
2番が始まってからも、引き続き大盛況の中を曲が進行。ここでは、サビ前に玉置さんの姿が一際輝く場面がありました。
明日も何かを頑張っていりゃ
でステージのライトが一気に暗くなり、玉置さんのみを白く照らす演出。大ホールで見るこのライティングは、より存在感を感じる神々しいものがありました。また、このタイミングでオーケストラの伴奏も一瞬止まり、アカペラの歌声もさらに引き立てられました。以降のサビも観客の手拍子が後押しして曲が進むと、2日目は玉置さんがそれに応えるようなジェスチャーを見せました。
僕がいるんだ みんないるんだ
では、観客席に向けて幅広く手をカバーして、
そして君がいる 他に何ができる
では、指をまっすぐに伸ばす動作がありました。続くラストサビの、
生きていくんだ それでいいんだ
では、気持ちを込めるような語気を強めた歌い方を見せて後奏のパフォーマンスに入ります。大友さんが右手を突き出すパンチのような指揮で打楽器音を鳴らしてその後のオーケストラ演奏を預けると、以降は玉置さんの方を向いて指揮をします。腰を下げて両手を握り、拳を奮わせる動作で玉置さんのシャウトを引き出しました。それに応える玉置さん。溌剌とした小刻みなシャウトから、後屈姿勢で放たれる大迫力のロングトーンが会場にこだましました。このトーンの序盤からは、早くも地鳴りのような拍手が客席から巻き起こり、圧巻のクライマックスが繰り広げられました。最後は大友さんが両手を大きく振りかぶってから、腕を回して手を上げる指揮で曲が終了しました。玉置さんもこの指揮と共鳴するように、マイクを天井に向けて一直線。壮観なパフォーマンスが豪快に締めくくられました。
曲後は客電が点灯して、再びカーテンコールの演出に入ります。1度、ステージと舞台袖を往復する玉置さんと大友さん。再び姿を見せた際には大きな拍手が起こりました。非常に熱気を帯びた場内の雰囲気で、観客が総立ちのまま次曲が始まろうとします。
15. メロディー
曲前、1日目は大友さんがこちらを向き、両手を広げて前に出し、手を上から下に降ろして座るよう観客に促しました。一方、2日目は客席を窺う様子はなく、スタンディングのまま曲がスタートしました。この2日間の「メロディー」は、玉置さんの気持ちがとても入ったパフォーマンスでした。序盤の静かに歌うパートも、サビの裏声やロングトーンも、隅々にまで歌声の成分が浸透されて、非常に充足感を感じる仕上がりでした。
1日目は、2番の始まりでちょっとしたハプニングがありました。歌と演奏のタイミングが少し外れて、玉置さんの歌声が先行して入り、
な〜〜つかしいこの店の
というように間延びをさせる歌い方で伴奏のテンポに合わせました。2日目は前日の件があったためか、玉置さんと大友さんが向き合って、入りのタイミングをよく確かめながら2番がスタートしました。2日目は、以降の玉置さんの歌声が感傷的なものになりました。時折、声を詰まらせながら歌い、5/11@愛知公演で見た涙しながらのパフォーマンスがどこか脳裏に浮かんでくるような歌い方でした。そんな手に汗握るステージになりましたが、この日は声が華奢になることはなく、力強い歌声で歌い切りました。
2番終了後には、間奏中にいつもと同様の動作でマイクをテーブルに置き、イヤモニを外す玉置さん。2日目は、まもなく歌唱パートが始まろうというポイントでタオルを手に取って、鼻と目を拭う姿を確認しました。この動作で、前述のセンチメンタルな玉置さんの心境を確信するに至りました。その後のノーマイク歌唱は特にパワフルな歌声で、非常に力の入ったパフォーマンスでした。ラストのトーン、
泣かないで〜〜〜〜〜
の途中には、大友さんの大胆な指揮からオーケストラの激しい演奏が生まれ、玉置さんの歌声と共鳴するように音が重なりました。最後は一転して静まり切った中、
あの歌は心から聞こえてるよ
の優しい歌声で歌唱パートが終了。この姿を最後まで見届けてから大友さんが指揮を再開して、短編の後奏が始まります。ここでは玉置さんのハミングもしっかりと聴こえて感動のフィナーレを飾りました。
曲後は場内が明るくなり、ここでも観客席から拍手が飛び交う中をカーテンコールの演出に入ります。この流れが2日間で異なりました。1日目は玉置さんが上手端と下手端まで歩いていき、観客からの声援に応える場面がありました。そこからステージ中央に戻ると、

ありがとう〜!!!
と叫び、大友さんと2人でステージを後にしました。2日目は玉置さんが舞台中央に留まり、その場で客席正面・上手・背面・下手の順に身体を向けて深くお辞儀をしました。そこから再び正面を向くと、両手を下に伸ばして決めポーズをして、歴史的なステージを強調するようなジェスチャーを見せました。その後、大友さんと2人で退場しました。
オーケストラのみが残ったステージが長く続き、楽団がその場に座ったまま待機します。しかしながら、依然として館内アナウンスが流れる気配はありません。すると、大きな間を空けて玉置さんと大友さんが再登場してきました。2日目はガッチリとお互いの手を取り合っての入場に、場内が再び沸き返りました。しばらく観客の拍手を浴びながら、双方の素晴らしいパフォーマンスを称え合う両者。その後、1日目は大友さんがコンマスに演奏の指示を出して指揮台に登り、玉置さんがマイクを持ってダブルアンコールに向かいました。その一方で、2日目は次曲が実演されずに、2人が退場するような雰囲気が醸し出されました。そのとき、玉置さんと大友さんが

もう1曲☝️

もう1曲☝️
というように合図を交わしてから、大友さんがコンマスに演奏の指令を出して指揮台に上がりました。玉置さんもマイクを持ち、観客席を大きく覆うようなジェスチャーで一体感を作り出し、聴衆の歓喜が渦巻きました。
16. 田園(ダブルアンコール)
興奮冷めやらぬ中、カーテンコールの客電が点いたまま、大友さんの俊敏な指揮で玉置さん作曲の「田園」が駆け足にスタート。拍手もあっという間に強くなり、大盛況の始まりになりました。すぐに訪れるイントロの発声パートでは、基準音として第一声を玉置さんが歌い、以降は両手を大きく広げて観客の合唱になりました。本ツアーの副題である、
友よ歌え、歓喜に満ちあふれた歌を。
を体現する演出で、14,000人の観客による大合唱が生まれました。
Aメロからは玉置さんが1人で歌い進め、ダブルアンコールではここでも拍手が続く展開になりました。ホールが暗転する様子もなく、とても明るい雰囲気で曲が進行しました。そのため、ステージの左右に設置されたスクリーンは場内との明度差が小さくなり、視認が難しくなりました。よって、多くの観客がステージを一点集中で見つめてパフォーマンスが進んでいったと推測しています。Bメロに入ると、2日目は玉置さんがステージの背面を向いて歌い、本編よりもカジュアルな様子を見せました。サビの直前では、
毎日何かを頑張っていりゃ!
と語気を強調するような歌い方を見せてサビに突入。ここでも、
生きていくんだ それでいいんだ
の大合唱を引き出しました。その後は玉置さんがソロで歌い、ラストのアレンジを
愛はここにある 北の丸にある
と歌い上げました。意表を突かれた歌詞変更で、1日目は玉置さんも少し歌い辛そうにしていました。そのため、やや声量が抑えられてこのワードを理解するのに時間を要しました。その一方で、2日目はとてもクリアに発音をしており、より鮮明にこの歌声を聴くことができました。
1番と2番を繋ぐ間奏も観客の唱和になり、2日目は前半パートを玉置さんが正面を向いて、後半パートは背面を向いてこの演出が行われました。Aメロが始まってからも継続して観客席からの手拍子が起こる中を進行。玉置さんが1人で歌い進めます。ここで、1日目はややハプニングがありました。
空のミルク瓶にタンポポ挿すあいつ
で、歌詞が出てこなかったのか、リズムが合わなかったのか、玉置さんの声量がガクッと落ちる場面がありました。直後にはこれを埋めるように、

ヘイ!
と叫んで客席の笑いを誘いました。その後は2番のサビも、
生きていくんだ それでいいんだ
が観客の合唱になり、本編と比較すると観客が歌うシーンが多くなりました。続く、
波に巻き込まれ 風に飛ばされて
を、2日目は玉置さんが1番の歌詞である、
ビルに飲み込まれ 街に弾かれて
と歌うと、すぐに苦笑いを浮かべて、歌いながら叫ぶ箇所がありました。その後のラストサビも、
そして君がいる 他に何ができるっ⤴︎
といった玉置さんの合図で、
生きていくんだ それでいいんだ
が大合唱になりました。そこから始まる後奏では、序盤の静かな口ずさみパートを、玉置さんが指揮を振る動作で観客に歌わせました。最後は演奏が少しずつ盛り上がっていくと、ついにはバトンが玉置さんに渡され、圧巻のシャウトパフォーマンスに移行しました。客席上手・正面・下手・背面の順に身体を向けて、各方向に指を差しながら小刻みに叫ぶ玉置さん。ラストは一本の特大なトーンが日本武道館に轟きました。締めくくりは本編と同様に、大友さんが大きく振りかぶって手を上げる指揮動作で終了。天晴れなパフォーマンスで、直後には玉置さんと大友さんが熱く抱擁を交わしました。
その後はしばらく拍手が続き、1日目はこのタイミングで玉置さんがピースマークを作り、客席に掲げる姿がありました。2日目は玉置さんが上手端と下手端まで歩み寄り、観客の声援に応えるとともに、楽団に向けて手を伸ばしてオーケストラを讃える動作も見せていました。両日ともに、そこから玉置さんと大友さんが退場していきました。しばらく経つと、コンマスが一歩前に出て客席に一礼をして、先頭に立って舞台袖へ歩いていきます。後を続くように、他の楽団も次々と退場し始めました。
そのとき、2日目の大千秋楽は、入場ゲートの奥に白髪を発見。次第にこのフォルムが大きくなり、ステージに迫ってきました。まさかの玉置さんの再登場に、再び歓喜に沸く観客。退場しかけた楽団も呆気に取られたようにその場に立ち止まり、主役の出戻りを見つめていました。玉置さんはステージの下手側に止まり、観客と同じように手を叩いて素晴らしいステージを褒め称えていました。やがてその光景を眺めていた楽団にも拍手を送り、見事に会場が1つになりました。しばらくすると、マエストロの大友さんも退場しかけたコンマスとともに姿を現し、オーケストラの2トップがステージに舞い戻りました。途中からは大友さんが1人で歩みを進め、玉置さんの元に近付きます。一言二言、言葉を交わしたのち、ここでも固く抱き合う両者の姿がありました。やがて玉置さんがステージ中央に来ると、

ありがとう〜!!!
とノーマイクで叫び、客席正面に向かってエアハグを見せて、熱いカーテンコールの演出を締めくくりました。最後は玉置さんと大友さんが手を繋いで退場し、しばらく経つとようやく館内アナウンスが流れて終演。10周年を迎えた記念すべきシンフォニックコンサートのファイナルが大盛況で終了しました。
以下、楽曲のセットリストです。
5. セットリスト
billboard classics
玉置浩二
LEGENDARY SYMPHONIC CONCERT 2025
“ODE TO JOY”
6月17日・18日
日本武道館
特別公演
セットリスト
【一部】
1. ベートーヴェン 交響曲第9番 第4楽章 「歓喜の歌」
2. 歓喜の歌(玉置浩二)
3. GOLD
4. ロマン
5. SACRED LOVE
6. MR.LONELY~サーチライト(メドレー)
7. Friend
【二部】
8. 『ハンガリー舞曲集 第1集』より第1番(J.ブラームス)
9. いつもどこかで
10. 行かないで
11. ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら(メドレー)
12. JUNK LAND
13. 夏の終りのハーモニー
【アンコール】
14. 田園
15. メロディー
【ダブルアンコール】
16. 田園
6. 公演後の様子
公演後の会場の様子です。
6/17 1日目
360°満員の観客が見守る中、
— こばかず (@anzen_koji_1982) June 17, 2025
圧巻のパフォーマンスでした!
明日はいよいよファイナルを迎える
“ODE TO JOY”公演
歓喜の瞬間を分かち合いましょう#玉置浩二#billboard#日本武道館 pic.twitter.com/BQkDzhswdK









6/18 2日目
大千秋楽に相応しいパーフェクトな公演!
— こばかず (@anzen_koji_1982) June 18, 2025
非常に完成度の高い仕上がりでした!
玉置さん×大友さん×東京フィル
10周年を飾る盤石の布陣は、
バンドグループのような一体感に!#玉置浩二#billboard#日本武道館 pic.twitter.com/jN9qmCJFYo



とにかく素晴らしい2日間が終了しました。10周年の集大成を飾るパーフェクトな仕上がりで、文句の付けようがないハイクオリティーなパフォーマンスが眼前で繰り広げられました。公演からはおよそ1ヶ月が経とうとしている現在も、充実感に満ちあふれたステージの光景が鮮明に蘇ってきます。来年のシンフォニックコンサートは節目を超えたシリーズになり、時期尚早ながらも新たなステージに期待が高まっている今日この頃です。そんな高揚する気持ちとは裏腹に、しばらくはあの余韻に浸り続けていたい、といったどこか穏やかな気持ちも同時に抱いています。来月からはソロツアーが始まりますが、当分はあの伝説的な公演を噛み締めて、しみじみと味わおうと思います。
こばかず
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